世界各国のマイナンバー事情(前編)

2015年から始まったマイナンバーの取り組みですが、6年近くが経過した今もなかなか普及が進んでいません。今年の4月ごろから健康保険証としても利用できると言われていましたが、トラブルが続いて延期になっています。

日本では運用が遅れているマイナンバー制度ですが、他の先進国はどうなっているのか気になりますよね?そこで、ここではマイナンバー制度が進んでいる国、デンマーク・韓国・フランスの状況をご紹介します。

デンマークのCPR

国民だけでなく長期滞在の外国人にも付与

デンマークには、「CPR(国民中央個人登録番号)」という国民識別番号が存在します。一般的にCPR、またはCPRナンバーと呼ばれています。

CPRナンバーは、すべてのデンマーク国民が保有しています。デンマークで生まれた子供は、担当助産婦がすぐに手続きを行います。(2~3時間後に付与が可能)また、3ヶ月以上デンマークに滞在する外国人もCPRを取得することが必要となります。例えば、留学、仕事、移民などで滞在する際です。

海外移住に関する情報を発信している「せかいじゅうライフ」の記事によると、CPRは10桁の番号で構成されていて、最初の6桁は生年月日、7桁目は誕生年、8~10桁目はランダムですが、10桁目の数字は男性なら奇数、女性なら偶数という構成になっています。

CPRはどんな時に使われているのか?

CPRナンバーが使われる場面は多岐にわたります。行政サービスを受けるときはもちろん、銀行口座の開設、ライフラインの申し込み、図書館の利用、公共交通機関、携帯電話の契約など、さまざまな場面において本人確認のために必要とされます。

さらに、病院にかかるときもCPRナンバーは必須です。もし手術をすることになった時にも、CPRナンバーで本人確認され、手首に巻く患者識別用のタグにもCPRナンバーが印刷されているほどです。

コロナ禍でも役立つCPR

デンマークもコロナの被害は大きく、各所で無料のPCR検査が実施されました。最高で1日15万人が検査を受けることもありましたが、CPRナンバーがあることで迅速な対応が可能となりました。

CPRナンバーは、個人の医療記録と紐付けられています。そのため、どんな既往歴があるかなど重要な情報がすぐに分かります。また、過去のPCR検査の履歴も把握・管理しています。検査の結果はアプリを使って個人に報告されますが、このアプリの利用にもCPRナンバーは必須です。

コロナ禍の給付金支給にも、CPRナンバーが大いに役に立ちました。ロックダウンが行われる前日に、デンマーク政府は「解雇しないことを条件として従業員の給与の75%を国が負担する」と発表しましたが、給付希望者はオンラインで申請(5分から10分で完了)、約1か月後に給付金が銀行口座に振り込まれたそうです。実はこの政策、立案されて実行に移すまでに要した時間は僅か24時間でした。これほど迅速な対応ができたのは、CPRナンバーと、CPRナンバーが銀行口座と紐づいていたことでしょう。

韓国の住民登録番号

北朝鮮の脅威から制定された

韓国の住民登録番号が生まれたきっかけは、60年代の韓国において問題となっていた北朝鮮スパイの存在です。北朝鮮スパイと韓国国民を識別するために、国民一人一人に固有の番号が割り振られるようになりました。住民登録番号は出生申告時に発行され、生涯番号は変わりません。1968年に12桁の番号で始まり、1975年からは13桁となりました。

13桁の数字は上6桁目が生年月日、7桁目が性別、8~11桁目までが地域番号、12桁目が出生申告順位、13桁目が検証番号でした。ですが、住民登録番号から出身地をすぐに判別できてしまうということでクレームが起こり、2020年10月以降に付与される番号は、8桁目以降(地域番号以降)の数字がランダム化されました。

なお、韓国はデンマークと違って、住民登録番号を保有できるのは韓国人のみです。外国人の場合は、外国人登録番号が付与されます。

住民登録番号はどんな時に使われているのか?

すべての行政機関で使用されます。学校の入学、運転免許証、パスポート、所得税などの税務申告、年金など、様々な場面で必要となります。ほかにも、銀行口座の開設、クレジットカードの申し込み、携帯電話・インターネットの契約時にも本人確認で必要とされます。

住民票や大学の成績証明書などのさまざまな証明書が、駅やショッピングセンターなどに設置されている専用の機械で発行することができます。手数料も、キャッシュレス決済ですから便利です。

また、病院に行ったときには、住民登録番号を提示すれば医療保険に加入しているかが分かるため、保険証の代わりとなります。韓国ではあらゆる時に住民登録番号の提示が求められますが、この番号があればとても便利な社会のシステムとなっています。

コロナ禍でも役立つ住民登録番号

韓国では、1世帯最大9万円の支援金が給付されました。申請方法は主にオンラインで行われ、住民登録番号に紐づけられている銀行口座にスムーズに給付されました。特にトラブルは発生せず、1か月ほどでほぼすべての世帯へ給付金の支給が行われました。日本は、住民基本台帳の確認作業などによる混乱が起きてしまいましたから、今後のシステムの改善に期待したいところです。

また、マスク不足が発生した時に、住民登録番号で購入できる人たちの管理を行いました。そうすることで、マスクを重複購入する事態を防ぐことが出来ました。さらに、電話番号やクレジットカード情報が紐づいていることを利用して、感染者の行動経路を追跡することに役立てることが出来ました。

フランスの社会保障番号

社会保障に限定されている

フランスでは、出生届が受理された時に社会保障番号が付与されます。この社会保障番号が、個人台帳登録番号(通称「NIR」)で、フランス版マイナンバーです。この社会保障番号は15桁の番号で構成されていて、最初の1桁目が性別(男性なら1、女性なら2)、2~5桁目が生年月、6~7桁目が県番号、8~10桁目がコミューン(地方自治体)番号、11~13桁目が同一地域における同年同月生まれの人の届け出順、14~15桁目が検証番号です。

フランスの社会保障番号の利用は限定的で、主に医療保険や年金に関する社会保障の面で使用されています。

どんな時に社会保障番号を使うか?

社会保障番号は、特に医療費の払い戻しや立替払いなどの際に用いられています。民間の保険に入っている人であれば、社会保障番号が記載された健康保険証(カルト・ヴィタル)と民間の任意保険の加入カードを持っていけば、健康保険で補えない場合に立替金を支払わずに済みます。ちなみに日本の場合、健康保険の限度額を超えた金額については、まず自分で支払って(立て替えて)から保険会社に請求する必要があります。

コロナ禍でも社会保障番号は役立つ

フランスも諸外国と同様、国民にコロナの支援金が給付されました。支援金は数回に分けて世帯ごとに振り込まれましたが、社会保障番号を使用することで、新たなシステムを構築する必要はなく、スムーズに支援金の支給が行えました。

また、PCR検査においても、社会保障番号が記載されている健康保険証(カルト・ヴィタル)を提示すれば無料で受けることができるというメリットもありました。フランスでは社会保障番号の利用により、コロナ禍での対応が問題なくスムーズに進んだようです。

まとめ

ここでは3つの国の事例を見ることができました。世界各国でマイナンバー制度が取り入れられていて、国民の生活を便利にし、さまざまな手続きがスムーズに進められています。

日本のマイナンバーカードも、少しずつ使いやすくなってきていることは間違いありません。しかし、他国に比べるとまだまだ見劣りしてしまうのが現状です。先進国でありながら、コロナの給付金支給では混乱が生じてしまいましたし、「アナログ社会」であることが露呈してしまいました。今後は、日本の改革が進んで「IT先進国」となることを期待することにしましょう。

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