世界的に広がる乳製品代替食品について(前編)
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どうして乳製品代替食品が求められているのか?
世界各国の畜産業・食品業界では、乳製品の代わりになる食品を開発しています。その背景に、消費者側の意識の変化が挙げられます。
たとえば、乳製品の大量消費が環境ににもたらす悪影響、健康問題、アニマルウェルフェアへの配慮などです。そのため、大豆など植物を原料とする乳製品代替食品を好んでいます。特に欧州では、食肉・乳製品の代替食品市場が拡大していて、植物性食品への移行を目指す動きが活発です。
このように多くの人々の意識が変化する中で、従来の畜産業界も、持続可能な食品開発に取り組み始めています。
畜産や酪農が環境に与える影響?
牛のゲップには温室効果ガスとなる「メタン」が含まれており、メタンは二酸化炭素の25倍の温室効果があることが分かっています。牛が発生させるメタンは、世界の温室効果ガスの4%に相当するといわれており、地球温暖化を危惧している人たちの間では、牛肉や乳製品を食べないようにする運動が広まっています。
2021年4月にアメリカで人気のレシピサイトにおいて、レシピに牛肉を使ったメニューについては新たな掲載を行わないことにしました。その理由として「世界で最悪の気候犯罪者の1人に出番を与えないため」(出典:NHK)と、畜産業を激しく非難しています。
農林水産省でも、牛のゲップの「脱炭素」の取り組みのために胃の中の微生物や餌を研究するとの報道がなされました。(2021/4/11時事)
また欧米では民間企業による取り組みが多く、これが今ビジネスチャンスとなっているようです。牛にも人にも環境にも優しい変化が訪れてほしいものです。
畜産や酪農が健康に与える影響?
畜産や酪農が健康に及ぼす影響としては、「乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)」や「牛乳アレルギー」といったよく知られた問題があります。この他にも、別の健康被害が起きています。
大きな問題となっているのが、家畜の排せつ物に含まれる「硝酸性窒素」によって地下水が汚濁すること、「クリプトスポリジウム(原虫)」によって水源が汚染されてしまうことです。
この問題の解決策として注目されているのが、家畜の排せつ物を土壌改良資材や肥料として利用することです。家畜の排泄物は、貴重なバイオマス資源となります。家畜の排せつ物を資源として有効活用することによって、汚染を防ぎ優しい環境に貢献することができるでしょう。
畜産や酪農がアニマルウェルフェアに与える影響?
アニマルウェルフェアとは、国際獣疫事務局(OIE)によれば、「①飢え、渇き及び栄養不良からの自由、②恐怖及び苦悩からの自由、③物理的、熱の不快さからの自由、④苦痛、傷害及び疾病からの自由、⑤通常の行動様式を 発現する自由」と定義されています。(出典:農林水産省)
つまり、家畜の飼養環境を、快適でストレスフリー、疾病から保護することです。安全・安心な環境は家畜の健康を保つことができ、畜産物の生産性が向上するでしょう。今後は、家畜の飼育環境の変化が求められています。
世界各国のアンケートに見る乳製品を取らない理由
独立行政法人農畜産業振興機構が、2021年1月から3月に世界各国で、乳製品の消費や乳製品代替食品についてのアンケート調査を行いました。その結果をご紹介します。
乳製品を取らない人の割合
調査の結果を見ると、世界では牛乳や乳製品を全く取らない人が一定数いることが分かります。最も多いのはアメリカで、回答者の14%が「牛乳・乳製品を全くとらない」と答えています。続いて日本12%、ドイツ10%、オーストラリア9%となっています。最も低いのはインドネシアの4%です。
ですが多くの国では、牛乳や乳製品を取る人の方が取らない人を上回っているのが現状です。
乳製品を取らない人の理由
全く乳製品を取らないという人たちの回答理由は以下のとおりです。
単に「味が好きではない」という人が多くの国で見られますが、それ以外にも様々な理由があるようです。「健康・安全面での不安」を挙げる人も全体的に多く、アメリカ・ブラジル・オーストラリアでは味の好みよりも上回っています。また、「環境への負荷が大きい」「動物がかわいそうだから」といった回答も見られます。
「環境への負荷が大きいと思うから」と回答した人が、インドネシアの2%を除いて、ほとんどの国で10~20%いることも注目すべき点でしょう。環境問題を考えている人たちが、増えているのですね。
まとめ
ここでは、乳製品代替食品が求められている世界的な現状をお伝えしました。世界各国で乳製品に代わる食品開発が始まっていて、今後の需要は拡大していくでしょう。この市場は、発展の可能性が大きいものと予想されます。
後編では、どんな乳製品代替食品があるのかご紹介したいと思います。お楽しみに。