「機械翻訳」の難しさ − 大阪メトロのウェブサイトで起きた事例から考える

2019年3月24日機械翻訳,翻訳,鉄道

大阪メトロ外国人向けウェブサイトで起きた「機械翻訳」の誤訳

大阪メトロは当面の間、公式サイトの外国語ページの公開を休止することになりました。米Microsoftの自動翻訳ソフト(Bing翻訳)を導入して翻訳した結果、「路線名」などで誤訳が発生してしまったからです。

「堺筋線」を「Sakai Muscle line」→  「サカイマッスルライン」

「筋」を筋肉の「マッスル」と誤訳してしまったんですね。「堺マッスル線」(笑)、なかなか面白いので、大阪の人の心は掴んだようです。Twitterでも「破壊力がやばい」「こんなん笑う」「これは良い誤訳」などと盛り上がったそうです。

「天下茶屋」を「World Tea house」→ 「ワールドティーハウス」

これでは、意味不明ですね。

「3両目」を「3 Eyes」→ 3アイズ

「両目」を文字通りの「目」と勘違いしてしまいました。「両目」ですので複数形で訳したのですが、残念ながら誤訳の上塗りになってしまいました。

「太子橋」を「Prince Bridge」→  「プリンスブリッジ」

王子様の橋という意味になってしまいますね。

これらの誤訳が発生してしまった原因は、作業の効率化のために「機械翻訳」を利用し、そのままウェブサイトに掲載してしまったからだと思われますが、現時点では「機械翻訳」だけに頼って翻訳することは危険だということが分かります。

そもそも「機械翻訳」(machine translation)とは?

ウィキペディアによると、「ある自然言語を別の自然言語に翻訳する変換を、コンピューターを利用して全て(ないし、可能な限り全て)自動的に行おうとするものである。近年のコンピュータの速度と容量の拡大にもとづく「力業による解決」が進んだことなどにより、急速に成長している分野である。」とあります。非常に便利なツールであると同時に、使い方を誤ると今回のような思わぬアクシデントの原因となることもあり得ます。

「機械翻訳」でできること

正しい文法、明確な文章構造を持つ文章は得意です。
例えば、Googole翻訳を使って日本語から英語に翻訳すると、

日本語から中国語に翻訳すると、

日本語から韓国語に翻訳すると、

改善の余地はあるものの、概ね正解です。

「機械翻訳」で出来ないこと

では、機械翻訳が苦手とすることを見てみましょう。機械翻訳では、「地名・ことわざ・慣用表現・メニュー」などの翻訳は改善が必要です。

例えば、和食メニューでおなじみの「ホッケの開き」を「Google翻訳」で見てみましょう。正確に翻訳されるのでしょうか。

まずは日本語から英語に翻訳すると、


このように「ホッケの開き」は「Opening of the hokke」と訳されています。これでは、何のことやら意味不明ですね。

では、中国語に翻訳してみるとどうでしょうか。

「開放的なhokke」、やはり意味がまったく分かりません。

韓国語ではどうでしょうか。

「ホッケの違い」と訳されています。どうやら「開き」を「差異」と勘違いし、「ホッケの差異」ではちょっと固いので、「ホッケの違い」にブラッシュアップしたようです。

自動翻訳の誤訳に関してはこちらの記事もご覧ください。

一長一短ある「機械翻訳」ですが、適切に利用すれば非常に便利なツールです。ではどのような場面で活用できるでしょうか。

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「機械翻訳」を上手に活用するには?

ご存知の方も多いと思いますが、コミュニケーションには言語によるコミュニケーションと非言語によるコミュニケーション(表情や口調、みぶりなど)があります。そしてある研究によれば言語によるコミュニケーションの割合はわずか7%とのことです。私たちは言葉以外で結構意思の疎通を行っていたわけですね。

さて、そのことと機械翻訳にどんな関係があるでしょうか。機械翻訳が正しく活躍できるのは非言語コミュニケーションで、そのミスを補える場面ではないかと思います。例えば、店舗での買い物のサポートや道案内など、人と人とが直接コミュニケーションを取れる場合であれば、機械翻訳にミスがあっても、それを補うことが可能です。仮に相手の翻訳機に「sakai muscle line」や「Opening of the hokke」が表示されていても、理解できないことは表情や身振りで伝えられますね。また、相手も正しく伝わっていないことがすぐに理解でき、やはり身振り手振り、もしくは片言の外国語など他の方法でなんとかコミュニケーションをとることができます。それで、機械にはミスがあることを前提として、それをカバーする手段を確保したうえで利用することが必要ですね。

その一方で、ウェブサイトや案内表示などの文字情報、もしくは一方向での情報伝達の場面では機械翻訳に依存するのは考え物です。この種の翻訳は、翻訳会社など経験やスキルを持つ専門家に依頼する必要があります。

まとめ

大阪メトロの事例からも分かるように、会社やブランドの「顔」ともいえるウェブサイトなどを多言語化する際には、「機械翻訳」に頼ることは避けたいものです。笑い話で済めば良いのですが、誤訳によってブランドイメージの低下や、潜在顧客を失うことも十分に考えられます(中国語誤訳の一例ですが、ある料理名がここでは書けないほどの下品なワードに訳されていたことがあります)。ウェブサイトなどの「多言語対応」は、ぜひとも専門の「翻訳会社」に依頼することにしましょう。翻訳会社は言語のプロフェッショナルですし、価格・納期・品質などクライアントの要望に柔軟に対応してくれます。気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

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