ムスリム女性の多様なスタイル

はじめに

イスラム教は、世界3大宗教の1つ、およそ1,400年前にアラビア半島で始まった教えです。その信徒、イスラム教徒(ムスリム)は、全世界に18億人以上いるといわれています。

2021年「世界人口白書」による現在の世界人口は約78億人ですから、4~5人に1人の割合でムスリムということです。世界の中でも中東、東南アジア、インドを中心にムスリムの分布が広がっており、1番多いのがインドネシアです。

ムスリムの女性の服装は、多様で多彩な特徴的なものです。ムスリムだからといって同じ装いではなく、歴史と宗教への解釈によって、国や地域で少しずつ異なっています。

特にアフターコロナにおいてはイスラム圏の人々も観光などのために訪日することが多くなることでしょう。観光業に携わる方にとってもイスラムに関する知識は欠かせないものになるはずです。ここでは、興味深いムスリム女性の装いについてご紹介します。

ムスリム女性が守っている規範

まずは、ムスリムについてご説明します。

ムスリムとは、イスラム教徒のこと。
ムスリムの女性は、イスラム教の聖典「クルアーン」の規範に従っています。
クルアーンには、イスラム教に基づく冠婚葬祭や食事・礼拝の際の教えと決まり事、人々の生活全般に関わるさまざまな規範が記されています。

なかでも、異性との接触は望ましくないというイスラムの教えによって、女性は顔と手以外を隠し、近親者以外の人の目に留まらないようにすること、露出の多い服を着ないことなどが規範とされています。

詳しいムスリムの情報は、こちらの記事「ムスリムを知る|イスラム教のルール(信仰、生活規範、服装)とは?」をご覧ください。

ムスリム女性の装いバリエーション

ムスリム女性の服装にはさまざまな装い方があるのでご紹介します。

ヒジャブ 

ヒジャブとは、一般的によく知られるイスラム教徒の女性が使う「スカーフ」のことです。
隠す布として頭髪を隠し首までを覆いますが、顔は出します。
髪や肌を隠すことで思考や言動などの内面も慎しみ深くなるため、精神的にも楽に生活できるとの考えに基づくものです。

首から下の服装はごく普通で、大きな縛りもなく、カラフルなものから白まで多種多様。
東南アジアのイスラム教徒の女性に多いスタイルです。

ヒマール

ヒマールとは、顔を除き、頭皮からお尻までを隠すベールのことです。
ヒジャブと似ていますが、ヒマールは隠す範囲が背中まで達し、普通のヒジャブより広く長く覆いつくします。
アラブでは、ヒジャブと同じくらいヒマールを身につける女性が多いのが特徴的です。

アバヤ

アバヤは、長衣、黒いガウンのことです。
くるぶし丈の黒い衣服を羽織り、黒のビジャブをするスタイルが一般的です。
全身黒づくめになりますが、黒のビジャブには刺しゅうを施すなどして個性を表す面も見受けられます。
主にサウジアラビア、アラブ圏湾岸諸国、インドで見かけるスタイルです。

ブルカ

ブルカは全身を覆う服のことですが、元々はアラビア半島で使用されていた顔マスク(ヴェール)です。
現在はアフガニスタンの女性などが目の部分だけ開けたり、メッシュにしたりと、さまざまなマスクにして全身を覆う服と一体化させています。

ブルカは日常的に着るものではなく、男性が多く集まる場所などへの外出時に着る服として使用されています。
特に、アラビア半島やアフガニスタン、パキスタンに見られる服装ですが、保守派の女性ムスリムが着るようです。

ニカーブ

ニカーブとは、目の部分だけが開いていて顔は隠すタイプの布のこと。
全身を覆う黒い布で、アバヤと合わせて着るものです。
ベールの上からさらに黒く薄いフェイスカバーをつけて目を覆うこともあります。
サウジアラビア、アラブ圏、インド、イエメンやソマリアなど、保守的な層に見られる服装です。

チャドル

チャドルは大きな一枚の布で全身を覆うスタイルのことです。
黒い布を羽織るのではなく、全身に布を巻き付けて着ているタイプ。
主にイランに多いですが、イラクの女性たちも着ています。
黒だけでなく花柄などの模様の布もあって、カラフルです。

ブルキニ

ブルキニは、ムスリム女性向けの水着のことです。
露出するのは顔と手足の先だけで、体にも密着しないデザインです。
レバノン系オーストラリア人のデザイナーが考案したブルキニは、ヘッドカバーにツーピースタイプの新しいスタイルの水着になっています。

基本の典型的スタイル  出典:AFP BB News

なぜムスリム女性は「覆い」をつけるのか

イスラムの神は、女性たちに、「目を伏せ、プライベートな部分を守り、男性を魅惑させない」ように貞節を守れと伝えています。
ムスリム女性が「覆い」をつける大きな理由は、このイスラム教の教えに従っているからなのです。

イスラムの女性はヒジャブを身につけることで、満足感や愛、充実感などのさまざまな感情を表現しアイデンティティを表明しています。
ムスリムの女性にとって「覆い」は彼女たちのプライドでもあります。

モデルで活動家でもある、あるムスリムの女性は、「ヒジャブが尊重されないなら、もうランウェイは歩かない」とまで言っています。
彼女は自分のスタイルを守りつづけ、世界的に有名なファッション雑誌にも起用された「ヒジャブを纏ったモデル」として有名ですが、人種や宗教の多様性について一石を投じています。
一方、世界にはヒジャブの着用を女性への強制だと感じている人もいます。

近年のヒジャブスタイルは生地や色も多種多様で自由です。
全身真っ黒なスタイルを好む人もいれば、カラフルなヒジャブにTシャツGパンという人もいて、個人の好みで人それぞれに表現しているようです。
ムスリム女性は「覆い」の付け方・選び方で個性を表現していますので、装い方は多様化しているように感じられます。

まとめ

世界には、さまざまな文化と背景を持つ人々がいます。

今回ご紹介したイスラム教徒、ムスリムの女性の装いには、信仰する宗教だけでなく、彼女たちの考え方や生き方そのものが表現されていることを知ることができました。

ムスリム女性の多様なスタイルを周囲が尊重していくことが大切なのではないでしょうか

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