
有価証券報告書 英訳の義務化はいつ?2025年以降の市場環境と企業の対応策を解説
2025年4月、東京証券取引所プライム市場における決算情報の英文同時開示が義務化され、日本の資本市場は大きな転換点を迎えました。こうしたグローバル化の潮流の中で、多くのIR担当者様が頭を悩ませているのが有価証券報告書の英訳への対応ではないでしょうか。
現在の法令では、有価証券報告書の英訳は「努力義務」という位置付けに留まっています。しかし、金融庁による英訳実施企業一覧の公表が始まるなど、市場からは「義務ではないが、対応して当然」という無言の圧力が強まっています。実際に海外投資家の約7割が現状の英文開示に不満を抱いており、情報の質とスピードの改善は、もはや避けて通れない経営課題です。
この記事では、有価証券報告書 英訳を巡る最新の市場動向から、海外投資家が真に求める情報、そして実務上の大きな壁となる「コスト・品質・納期」をどう最適化すべきかについて詳しく解説します。
- 有価証券報告書の英訳が注目される背景(2025年の英文開示義務化)
- 海外投資家が抱える課題と英文開示への期待
- 英訳体制構築のポイント(コスト・品質・納期の最適化)
- 英文開示が企業価値に与える影響(IR戦略への波及効果)
有価証券報告書の英訳は努力義務だが、実務上は必須へ

決算短信の英訳が進む一方で有価証券報告書の実施率は約2割に留まっていますが、詳細な情報を求める海外投資家の7割以上が現状に不満を抱いていることから、外国人保有比率が3割に達する現在、その対応は法令の枠を超えた実務上の必須課題となっています。
プライム市場の英文開示義務化と有価証券報告書の重要性
東証プライム市場の約1,650社のうち、2025年時点で有価証券報告書の英訳を実施している企業は約21%に留まっています。全文実施は約10%程度、一部または概要の英訳を含めても24.5%(参照:JPXレポート)という状況です。一方で、決算短信の英訳実施率は93%以上(参照:JPXニュース)に達しており、企業の対応に明確な温度差が見られます。
この差はなぜ生まれるのでしょうか。決算短信は数ページの簡潔な情報であるのに対し、有価証券報告書は100ページを超える詳細な法定開示書類です。翻訳コスト、専門性の要求水準、継続的な体制構築の必要性など、企業が直面するハードルは決して低くありません。
しかし、海外投資家の視点は異なります。彼らが真に知りたいのは、決算短信の要約ではなく、事業リスク、ガバナンス体制、詳細な財務情報が記載された有価証券報告書の内容なのです。
海外投資家の72%が英文開示に不満を抱く理由
東京証券取引所が2023年8月に実施した海外投資家アンケート調査によると、海外機関投資家の72%が日本企業の英文開示に不満を持っているという衝撃的な結果が明らかになりました。具体的な不満の内容は以下の通りです:
- 情報の不完全性:決算短信は英訳されていても、詳細情報が日本語のみで開示されている
- 開示タイミングの遅れ:日本語版公開から数週間〜数ヶ月後に英語版が公開される
- 翻訳品質のばらつき:専門用語の誤訳や不統一により、正確な企業分析が困難
- 比較可能性の欠如:企業ごとに英訳範囲や用語が異なり、横並び比較ができない
日本市場における外国人投資家の保有比率は約30%に達しており、もはや無視できない存在です。彼らの投資判断を左右する情報開示のあり方は、企業価値そのものに直結する重要な経営課題となっています。
有価証券報告書の英訳が重要視される理由

英訳実施率が約2割に留まる一方で9割以上の海外投資家が詳細情報を求めているというギャップの解消は、投資判断への直接的な好影響や金融庁の評価制度を通じたブランド強化につながり、グローバル市場での信頼獲得に不可欠な要素となっています。
英訳実施率と投資家ニーズのギャップ(21% vs 90%)
東京証券取引所の調査データによると、プライム市場上場企業の有価証券報告書の英訳実施状況は以下の通りです:
- 全文英訳実施:約10%
- 一部・概要英訳:約11%
- 英訳実施率(合計):約21%
- 未実施:約79%
- 猶予措置取得:約7%(114社)
一方、海外投資家が期待する英文開示の水準は極めて高く、特に以下の情報については90%以上が「全文英訳が必要」と回答しています:
- 事業等のリスク
- 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)
- コーポレート・ガバナンスの状況
- 連結財務諸表注記
このギャップは、日本企業が世界の投資家から適切に評価される機会を逃していることを意味します。
金融庁「英訳企業一覧」制度が企業にもたらす影響
金融庁は2019年から、有価証券報告書の英訳を実施している企業を一覧で公開する制度を運用しています。これは表面的には「優良事例の共有」という形をとっていますが、実質的には英訳未実施企業を可視化する圧力装置として機能しています。
この一覧に掲載されることは、企業にとって以下のメリットをもたらします:
- グローバル投資家へのアピール:英文開示に積極的な企業として認知される
- ESG評価の向上:情報開示の透明性が評価指標の一つとなる
- 企業ブランドの強化:国際的な経営姿勢を示すシグナルとなる
逆に言えば、この一覧に掲載されない企業は「グローバル対応が遅れている企業」というレッテルを貼られるリスクがあります。
英文開示の改善が企業評価に与える効果
JPXが実施した海外投資家へのアンケート調査(2025年9月)によると、英文開示を充実させることで以下のような効果が期待されています。
海外投資家が評価する英文開示のメリット
- 88%が英文開示の改善を実感:海外投資家の88%が日本企業の英文開示が「改善した」または「やや改善した」と回答
- 投資判断への直接的影響:有価証券報告書の英訳について、海外投資家の85%が「必要」と回答しており、英文開示の充実が投資判断に直接影響
- 外国人投資家比率の全体的傾向:日本市場全体では、外国人投資家の株式保有比率は32.4%(2024年度)と過去最高を更新
英文開示優良企業に共通する特徴(JPX調査)
JPXは2025年の調査で、海外投資家から「英文開示が優れている」と評価された46社をリストアップしています。これらの企業は、情報開示の透明性において海外投資家から高い評価を得ており、グローバル投資家からの信頼獲得に成功していると言えるでしょう。
企業が直面する5つの課題と解決策

有価証券報告書の英訳におけるコスト・品質・納期の最適化や誤訳リスクの回避といった実務上の高いハードルは、翻訳メモリを活用したハイブリッド体制や先行翻訳プロセスの導入、そして専門パートナーとの長期的連携による持続可能な体制構築によって克服可能です。
課題① コスト最適化:内製と外注の最適バランス
有価証券報告書の英訳にかかるコストは、企業規模や翻訳範囲によって大きく異なります。一般的な翻訳会社の文字単価は日英翻訳で10〜30円/文字程度が相場とされています。有価証券報告書の文字数は通常10万〜20万字程度のため、全文翻訳には相応の投資が必要です。
コスト最適化の3つのアプローチ
- 完全外部委託モデル
- 初期段階や専門性の高いセクション(リスク情報、法務関連)に適用
- 品質は最も安定するが、コストは最大
- 推奨:初年度および重要度の高い部分
- ハイブリッドモデル
- 財務数値や定型部分は内製化、専門的な記述は外部委託
- 翻訳メモリの活用により、2年目以降はコスト削減が期待できる
- 推奨:継続的な実施体制を構築する段階
- 内製+レビューモデル
- 社内リソースで初訳を作成、専門翻訳会社がレビュー・品質保証
- コストを大幅に削減できるが、社内に相応の英語力が必要
- 推奨:グローバル人材が豊富な企業
実際のコスト削減の工夫
翻訳メモリと用語集を初年度に構築することで、2年目以降は定型部分の翻訳コストを大幅に削減できます。変更部分のみを翻訳会社に依頼することで、継続的なコスト最適化が実現します。
課題② 品質確保:専門性と一貫性の担保
有価証券報告書には、会計用語、法律用語、業界特有の専門用語が大量に含まれています。これらの用語を一貫して正確に翻訳することが、投資家の信頼を得る上で不可欠です。
品質確保の3つの重要要素
- 専門用語集の構築
- 会社固有の用語(製品名、事業セグメント名など)
- 業界標準用語(会計基準、規制用語など)
- 過去の英文開示資料との整合性確保
- 翻訳メモリの活用
- 前年度の翻訳文を資産として蓄積
- 定型表現や繰り返し使用される文章の一貫性を自動担保
- 年を追うごとに翻訳品質が向上し、コストも削減
- 多段階チェック体制
- 専門翻訳者による初訳
- 金融・法務に精通したレビュアーによる校正
- ネイティブチェッカーによる最終確認
- 可能であれば、社内の海外事業部門による内容確認
ISO 17100認証の重要性
国際的な翻訳品質基準であるISO 17100認証を取得している翻訳会社を選ぶことは、品質担保の最も確実な方法です。この認証は、翻訳プロセス、品質管理体制、翻訳者の資格要件などが国際基準を満たしていることを証明するものであり、特に法定開示書類の翻訳では必須条件と言えるでしょう。
課題③ 納期管理:同時開示を実現するプロジェクト設計
海外投資家が最も重視するのは、日本語版と英語版の開示タイミングの同時性です。数週間のタイムラグがあると、その間に株価が動いてしまい、英語版の情報価値が大きく損なわれます。
同時開示を実現する3つのステップ
- 先行翻訳の実施
- 前年度と変更がない定型部分を事前に翻訳
- 決算確定前でも翻訳可能な部分(事業概況、ガバナンス体制など)を先行処理
- 翻訳期間を実質的に大幅短縮可能
- 並行作業体制の構築
- 財務数値確定と同時に翻訳作業を開始
- セクションごとに分担して並行処理
- リアルタイムでの質疑応答体制を確保
- XBRL対応との連携
- 財務数値のXBRLデータを活用して効率化
- データの二重入力を防止
- 誤記のリスクを最小化
専門翻訳会社との長期的なパートナーシップを構築することで、企業の事業内容や用語に精通した翻訳チームが形成され、納期短縮と品質向上の両立が可能になります。
課題④ リスク管理:誤訳リスクの最小化
有価証券報告書の誤訳は、単なる言語的な問題ではなく、投資判断を誤らせる重大なリスクです。特に以下のセクションでの誤訳は、企業価値の毀損に直結します。
高リスク領域とその対策
- 事業等のリスク
- リスクの程度を過小評価する翻訳
- リスクの発生可能性を誤って伝える表現
- 対策:法務部門による必須レビュー
- 財務情報・会計方針
- 会計基準の専門用語の誤訳
- 数値の桁区切りや単位の誤り(百万円⇔千円など)
- 対策:財務部門およびCATツールによるダブルチェック
- 関連当事者取引
- 取引関係の誤解を生む表現
- 利益相反の可能性に関する不適切な記述
- 対策:コンプライアンス部門の確認必須
誤訳リスクを最小化する体制
- 専門翻訳者の配置:金融・会計・法務のバックグラウンドを持つ翻訳者
- 翻訳支援ツール(CAT)の活用:数値や固有名詞の一貫性を自動チェック
- 社内承認プロセスの明確化:各セクションの責任部門による内容確認
- 賠償責任保険の確認:翻訳会社が適切な保険に加入しているか確認
課題⑤ 体制構築:継続可能な英訳プロセスの整備
有価証券報告書の英訳は、一度限りのプロジェクトではなく、毎年継続して実施する恒常的な業務です。そのため、持続可能な体制構築が不可欠です。
社内体制の整備ポイント
- 責任部門の明確化
- IR部門:全体統括、投資家対応
- 財務部門:財務情報の正確性確認
- 法務部門:法的記載事項のレビュー
- 経営企画部門:事業内容の記述確認
- 社内スケジュールへの組み込み
- 年間IR計画に英訳スケジュールを明記
- 各部門の作業期限を明確化
- バッファを持ったスケジュール設定
- 外部パートナーとの長期契約
- 複数年契約によるコスト安定化
- 専任チームの形成による品質向上
- 用語集・翻訳メモリの共同管理
法定開示書類の翻訳:プロが語る成功の秘訣

法定開示書類の翻訳を成功に導くには、ISO認証による客観的な品質・セキュリティ保証を基盤とし、金融・法務の専門知識を持つチームと支援ツールを活用して正確性と整合性を担保しつつ、継続可能な実施体制を確立することが不可欠です。
ISO認証が示す翻訳品質と情報セキュリティの重要性
有価証券報告書のような法定開示書類の翻訳において、品質管理体制は企業の信頼性に直結します。その品質を客観的に保証するのが、ISO 17100(翻訳サービス)およびISO 27001(情報セキュリティ)の国際認証です。
ISO 17100による品質管理プロセス
- 翻訳者の資格要件
- 専門分野の学位または5年以上の実務経験
- 母国語への翻訳原則(ネイティブチェック必須)
- 継続的な専門教育の受講
- 翻訳プロセスの標準化
- 翻訳→レビュー→校正→最終確認の多段階チェック
- 用語集・スタイルガイドの整備と活用
- 翻訳メモリによる一貫性の担保
- 品質保証体制
- 独立したレビュアーによる客観的評価
- クライアントフィードバックの体系的管理
- 継続的改善プロセス(PDCA)の実施
ISO 27001による情報セキュリティ体制
有価証券報告書には未公開の重要情報(インサイダー情報)が含まれているため、翻訳会社の情報セキュリティ体制は極めて重要です。ISO 27001認証は以下を保証します:
- 物理的セキュリティ(入退室管理、施錠保管)
- 技術的セキュリティ(暗号化通信、アクセス制限)
- 人的セキュリティ(秘密保持契約、社員教育)
- 業務プロセス(データ削除手順、監査証跡)
金融・法務に精通した専門翻訳者の重要性
有価証券報告書の翻訳には、単なる言語能力だけでなく、金融・会計・法務に関する深い専門知識が不可欠です。
金融専門翻訳者に求められる資質
- 会計知識
- 日本基準・IFRS・US GAAPの理解
- 連結財務諸表の構造と注記事項の読解力
- 会計用語の正確な把握能力
- 法務知識
- 金融商品取引法、会社法の基本理解
- 開示規制の要求事項の把握
- 法的リスク記述の適切な表現力
- 業界知識
- クライアント企業の事業内容の理解
- 業界特有の用語や商慣習の知識
- グローバル市場での同業他社の開示事例の参照
チーム配置の重要性
有価証券報告書の翻訳は、一人の翻訳者だけでは完結しません。理想的なチーム構成は以下の通りです:
- メイン翻訳者(1〜2名):金融・会計の専門知識を持つシニア翻訳者
- レビュアー(1名):翻訳者とは別の視点で品質をチェックする専門家
- ネイティブチェッカー(1名):英語表現の自然さと正確性を確認
- プロジェクトマネージャー(1名):全体統括、クライアントとの窓口
CATツール活用による効率化とコスト削減
CAT(Computer-Assisted Translation)ツールは、翻訳の効率化と品質向上を同時に実現する強力な武器です。
CATツールの3つの主要機能
- 翻訳メモリ(TM:Translation Memory)
- 過去の翻訳文を文章単位でデータベース化
- 同じ文章や類似文章が出現した際に自動提案
- 2年目以降、定型部分の翻訳時間を大幅削減
- 用語ベース(TB:Term Base)
- 専門用語とその訳語を一元管理
- 翻訳中にリアルタイムで用語を参照・適用
- 複数の翻訳者間での用語統一を自動化
- 品質保証(QA:Quality Assurance)
- 数値の不一致を自動検出
- 用語の不統一を警告
- スペルミスや書式エラーをチェック
翻訳メモリの資産価値
翻訳メモリは、年を追うごとにその価値が高まる企業の知的資産です。初年度に品質の高い翻訳メモリを構築しておけば、以降は継続的なコスト削減と品質向上が実現できます。
アットグローバルの実績と強み
アットグローバルは、これまで150社以上の企業のIR翻訳を支援してきた実績を持つ、金融・法務分野に特化した翻訳サービスプロバイダーです。多くの企業が当社を選ぶ最大の理由は、ISO 17100(翻訳品質)とISO 27001(情報セキュリティ)のダブル認証による確固たる信頼性にあります。
ダブルISO認証による品質と安全性
- 実績に裏打ちされた専門性
- 上場企業の有価証券報告書翻訳:年間100件以上
- 決算短信、適時開示、統合報告書など、IR資料全般に対応
- プライム市場・スタンダード市場・グロース市場すべてに実績
- ダブルISO認証による安心感
- ISO 17100:国際標準の翻訳品質管理プロセス
- ISO 27001:厳格な情報セキュリティ管理体制
- 定期的な外部監査による継続的な品質向上
- 金融専門チームの配置
- 公認会計士、証券アナリスト資格保有者を含む専門翻訳チーム
- 金融機関出身者、監査法人経験者など、実務知識を持つメンバー
- クライアント企業ごとに専任チームを編成
- 柔軟な納期対応
- 先行翻訳による同時開示の実現
- 緊急時の特急対応体制
- 海外投資家向けイベントに合わせたスケジュール調整
- 長期的なコスト最適化
- 翻訳メモリ・用語集の共同構築による2年目以降のコスト削減
- 透明性の高い見積もり(文字単価×分量で明確化)
- 複数年契約による割引プランの提供
金融・法務に特化した専門チーム体制
アットグローバルの強みは、単なる言語変換ではなく、金融・法務の専門知識を持つチームによる高度な翻訳サービスにあります。
専門チームの構成
- シニア翻訳者:金融機関・監査法人での実務経験10年以上
- 会計スペシャリスト:公認会計士資格保有者、IFRS・US GAAPに精通
- 法務スペシャリスト:弁護士資格保有者、金融商品取引法・会社法の専門家
- 業界アナリスト:各業界(製造業、IT、金融、小売など)の事業内容に精通
- ネイティブチェッカー:英語圏の金融機関でのキャリアを持つ専門家
品質管理プロセス
- プロジェクトキックオフ:クライアント企業の事業内容、前年度開示内容の徹底研究
- 翻訳フェーズ:専門翻訳者による初訳(翻訳メモリ・用語集活用)
- レビューフェーズ:独立したレビュアーによる専門的チェック
- ネイティブチェックフェーズ:英語の自然さ、読みやすさの向上
- 最終確認フェーズ:クライアント企業による内容確認
先行翻訳による短納期対応
有価証券報告書の同時開示を実現する上で最大の課題は納期です。アットグローバルは先行翻訳手法により、この課題を解決しています。
先行翻訳の具体的プロセス
- 第1フェーズ(決算確定前)
- 前年度からの変更が少ない定型部分を事前翻訳
- 対象:事業概況、ガバナンス体制、役員情報など
- 処理量:全体の50〜60%を先行処理
- 第2フェーズ(決算確定直後)
- 財務数値、MD&A、当期の事業概況など変動部分を集中処理
- 既存の翻訳メモリを最大活用
- 複数翻訳者による並行作業
- 第3フェーズ(最終調整)
- レビュー、ネイティブチェック
- クライアント確認、フィードバック対応
- レイアウト調整、XBRL変換
用語集・翻訳メモリの共同構築による継続的な最適化
アットグローバルの最大の特徴は、クライアント企業ごとにカスタマイズされた用語集と翻訳メモリを共同で構築・管理していることです。
用語集構築のプロセス
- 初年度の徹底的な用語整理
- 企業固有の用語(製品名、サービス名、組織名など)
- 業界専門用語の標準訳語
- 過去の英文開示資料との整合性確認
- 競合他社の用語使用例の参考
- 継続的なメンテナンス
- 新規事業、M&A、組織改編に伴う用語追加
- グローバル市場での用語トレンドの反映
- クライアントフィードバックに基づく改善
- 用語集の活用範囲拡大
- 有価証券報告書以外のIR資料への適用
- プレスリリース、ウェブサイトへの展開
- 社内の英文資料作成ガイドラインとして活用
共同資産としての管理
アットグローバルでは、用語集と翻訳メモリをクライアント企業との共同資産として位置付けています。データの所有権は明確にクライアント企業にあり、以下のメリットがあります:
- 翻訳会社を変更する場合でもデータを持ち出し可能
- 社内での英文資料作成にも活用できる
- 子会社や関連会社の開示資料にも展開できる
- 年次報告書(アニュアルレポート)との用語統一が容易
実施前に知っておくべきチェックリスト
有価証券報告書の英訳を成功させるためには、適切な準備と翻訳会社の選定が不可欠です。
翻訳会社選定の10項目チェックリスト(IR資料向け)
有価証券報告書の英訳を成功させるためには、適切な翻訳パートナーの選定が不可欠です。以下のチェックリストを活用して、貴社のニーズに最適な翻訳会社を見極めましょう。
翻訳会社を選ぶ際は、単に価格だけで判断するのではなく、専門性、品質管理体制、長期的な協業の可能性など、多角的な視点から評価することが重要です。特にIR情報という機密性の高い情報を扱う以上、セキュリティ体制と品質保証の両面で信頼できるパートナーを選びましょう。
| 評価項目 | チェックポイント |
| 1. 専門性と実績 | □ 金融・IR分野での翻訳実績が豊富か □ 上場企業の有価証券報告書翻訳経験があるか |
| 2. 品質管理体制 | □ ISO 17100認証を取得しているか □ 多段階レビュープロセスが確立されているか □ 専門分野に特化した翻訳者を配置しているか |
| 3. 情報セキュリティ | □ ISO 27001認証を取得しているか □ 秘密保持契約(NDA)の内容は適切か □ 未公開情報の取り扱いプロセスが明確か |
| 4. 納期対応力 | □ 同時開示に対応できる体制があるか □ 先行翻訳の実施が可能か □ 緊急時の特急対応体制があるか |
| 5. コスト構造 | □ 見積もりの根拠が明確か(文字単価、作業項目など) □ 追加費用が発生する条件が明示されているか □ 翻訳メモリ活用による2年目以降の割引があるか |
| 6. 技術インフラ | □ CATツール(翻訳メモリ)を活用しているか □ 用語管理システムが整備されているか □ セキュアなファイル送受信システムがあるか |
| 7. コミュニケーション体制 | □ 専任のプロジェクトマネージャーが配置されるか □ 質疑応答の対応時間は適切か |
| 8. 翻訳メモリ・用語集の取り扱い | □ 翻訳メモリの所有権はどちらにあるか □ 用語集の共同構築プロセスが明確か □ データの持ち出しは可能か |
| 9. 品質保証 | □ 誤訳が発見された場合の対応方針は明確か □ 修正費用の負担範囲は適切か □ 賠償責任保険に加入しているか |
| 10. 長期的なパートナーシップ | □ 継続的な品質向上の取り組みがあるか □ 担当者の異動時の引継ぎ体制は確立されているか |
見積もり依頼時に準備すべき情報(翻訳範囲・納期・品質要件)
精度の高い見積もりと最適なプラン提案を受けるためには、具体的な翻訳範囲や文字数、決算スケジュールに基づく希望納期、投資家向け資料として求める品質レベル、そして過去の翻訳資産の有無を事前に整理し共有することが不可欠です。
必須情報
- 翻訳対象範囲
- 全文翻訳 or 一部翻訳(どのセクションか)
- 前年度の有価証券報告書(PDFまたはHTML)
- おおよその文字数(前年度ベース)
- 希望納期
- 決算確定予定日
- 英語版公開希望日
- 先行翻訳の実施希望の有無
- 品質要求水準
- 投資家向け正式開示資料としての品質
- レビュー段階の希望(何段階のチェックを希望するか)
- ネイティブチェックの必要性
- 過去の英文開示実績
- 過去に英訳を実施したことがあるか
- 既存の用語集や翻訳メモリの有無
- 過去の英文開示資料のURL
有価証券報告書の英訳に関するFAQ
- 有価証券報告書の英訳は法的義務ですか?適用時期はいつですか?
-
2025年4月以降、東証プライム市場上場企業に対して決算短信と適時開示情報の英文開示が義務化されましたが、有価証券報告書の英訳自体は法的義務ではなく努力義務として位置づけられています。
金融庁は英文開示を推奨しており、任意で英訳した有価証券報告書を金融庁の英文開示一覧に掲載する仕組みを提供していますが、罰則や強制力はありません。
ただし、外国人投資家比率が高い企業や海外での資金調達を検討する企業にとっては、事実上の必須対応となりつつあります。猶予措置を受けた企業は約7%(114社)存在しますが、段階的に対応が求められる見込みです。
- 有価証券報告書の英訳にXBRL対応は必要ですか?
-
EDINET提出時にはXBRL形式のタクソノミに準拠したインスタンスデータの作成が必須ですが、英文開示の場合は現時点で明確な義務化はされていません。
ただし、JPXは「日英対訳集」を公開しており、XBRL要素の英語表記を統一する取り組みを進めています。実務上は、日本語版のXBRLデータと英訳版のPDF/HTMLを併用する企業が多く、将来的には英語版XBRLの標準化が進む可能性があります。
翻訳会社によってはXBRL対応の技術サポートを提供しているため、システム連携を前提とした翻訳プロジェクトの設計が推奨されます。金融庁の「報告書インスタンス作成ガイドライン」も参考になります。
- PDFやWordの有価証券報告書を丸ごと翻訳するツールはありますか?
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DeepLやGoogle翻訳などの機械翻訳ツールは、日常文書の翻訳には有効ですが、有価証券報告書のような法定開示書類には不向きです。理由は、
- 会計用語・法務用語の誤訳リスク
- 数値の誤認識
- 文脈を踏まえた表現の調整が困難
- 機械翻訳の痕跡が残り信頼性を損なう
などが挙げられます。特に「のれん」「繰延税金資産」などの専門用語は、業界標準の英訳(goodwill、deferred tax assets)を用いないと投資家に誤解を与えます。コスト削減のために機械翻訳を活用する場合でも、専門翻訳者によるポストエディット(人手修正)が必須です。
ISO 17100認証を持つ翻訳会社では、機械翻訳と人手翻訳を組み合わせたハイブリッド方式を提供しており、品質とコストのバランスを取ることが可能です。
- 英文開示のフォーマット・レイアウトは日本語版と同じでよいですか?
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英文開示のフォーマットには法的な統一基準は存在しないため、企業ごとに裁量がありますが、JPXは「英文開示様式例」を公開しており、決算短信や適時開示資料のレイアウトのベストプラクティスを示しています。有価証券報告書の場合、
- 日本語版と同じ構成(第一部・第二部など)を維持するケース
- 海外投資家向けに要約版(MD&Aと財務諸表のみ)を作成するケース
- アニュアルレポート形式に再編集するケース
の3パターンが主流です。特にPDF公開時には、英語読者の視認性を考慮したフォント選定(Times New Roman、Arialなど)、表組みの簡素化、脚注の配置調整が推奨されます。EDINET提出の際はHTML形式も求められるため、レイアウトの再現性とアクセシビリティのバランスが重要です。
- 有価証券報告書の英訳を依頼する際、事前に準備すべき用語集・スタイルガイドは何ですか?
-
翻訳品質と効率を高めるため、依頼前に以下の資料を整備することが推奨されます。
- 過去の決算短信・アニュアルレポートの英訳版(既存の訳語との整合性確保)
- 自社の会計用語リスト(固有の勘定科目、製品名、事業セグメント名など)
- スタイルガイド(数値表記、日付形式、通貨単位、カンマ・ピリオドの使い方など)
- 組織図・役職名の英語表記一覧(CEO、CFO、Executive Officerなどの統一)
- 法定用語の対訳表(会社法、金融商品取引法の条文引用時の標準訳)
これらを翻訳会社と共有することで、翻訳メモリ(TM)の精度向上と用語の一貫性確保が実現し、2年目以降の翻訳コスト削減にもつながります。アットグローバルでは、初回依頼時に専任PMが用語集の構築をサポートします。
結論:有価証券報告書の英訳を今すぐ始めるべき理由
将来的な義務化が見込まれる中、早期着手はコスト平準化や体制構築を有利にするだけでなく、投資家層の質的改善や資本コスト低減といった多面的な戦略的価値をもたらし、実施率が低い現状において確実な先行者利益と競争優位性を確保するための重要な経営判断です。
2026年以降の予測:有価証券報告書英訳の義務化の可能性
2025年4月の決算短信・適時開示の英文同時開示義務化は、日本市場のグローバル化における大きな一歩でした。しかし、金融庁と東京証券取引所の真の狙いは、有価証券報告書の英訳を市場全体に浸透させることにあると考えられます。
義務化への段階的な道筋
- 2025年:決算短信・適時開示の義務化、有価証券報告書は努力義務
- 2026〜2027年:英訳実施企業の一覧公開により、未実施企業への社会的圧力が強まる
- 2028年以降:実施率が一定水準に達した段階で、義務化の議論が本格化
- 2030年頃:プライム市場における有価証券報告書英訳の義務化実施(予想)
今から準備を始めるべき理由
義務化されてから慌てて対応するのではなく、今から段階的に準備を進めることで、以下のメリットが得られます:
- コストの平準化:初年度の高額投資を早期に実施し、2年目以降の削減効果を享受
- ノウハウの蓄積:翻訳プロセス、品質管理、社内体制を試行錯誤しながら最適化
- 競争優位性の確保:早期実施企業として投資家からの評価向上
- 義務化時の余裕:準備が整っている状態で義務化を迎えられる
海外投資家からの信頼獲得の先取り戦略
有価証券報告書の英訳は、単なるコンプライアンス対応ではなく、グローバル投資家との信頼関係構築のための戦略的投資です。
英訳実施がもたらす5つの戦略的価値
英文開示を充実させることで、企業は海外投資家との関係性を深化させ、株主構成の質的改善、IR活動の効率化、企業ブランドの向上など、多面的な価値を獲得することができます。以下の5つの戦略的価値を理解し、英訳実施の意義を経営判断に活かしましょう。
| 戦略的価値 | 具体的な効果 |
| 1. 投資家層の質的変化 | • 短期的なトレーダーから長期的な機関投資家へ• より深い企業理解に基づく建設的な対話• 株価ボラティリティの低減 |
| 2. IR活動の効率化 | • 海外IRミーティングでの質疑応答が具体化• 投資家からの信頼度向上により、説明時間が短縮• 誤解に基づく質問の減少 |
| 3. ESG評価の向上 | • 情報開示の透明性がESGスコアに反映• SRI(社会的責任投資)ファンドからの注目• サステナビリティ重視の投資家層の拡大 |
| 4. 企業ブランドの強化 | • 「グローバル経営を実践している企業」としての認知• 採用市場での訴求力向上(特にグローバル人材に対して)• ビジネスパートナーからの信頼性向上 |
| 5. 資本コストの低減 | • 情報の非対称性の解消による適正評価• より多様な投資家ベースによるリスク分散• 将来的な海外での資金調達の選択肢拡大 |
先行者利益を最大化する方法
現時点で英訳を実施している企業は約21%。この段階で実施することで、以下の先行者利益を享受できます:
- 差別化効果:競合他社に先駆けた開示による注目度向上
- 学習曲線の優位性:早期に経験を積むことで、効率的なプロセスを確立
- ネットワーク効果:海外投資家コミュニティでの認知度向上
- 規制対応の余裕:義務化時に慌てることなく、既存プロセスで対応可能
アットグローバルへのご相談ください!
有価証券報告書の英訳は、企業にとって重要な経営判断です。コスト、品質、納期、社内体制など、多くの要素を総合的に検討する必要があります。
アットグローバルがお手伝いできること
✅ 150社以上の実績に基づく最適なソリューション提案
✅ ISO 17100・ISO 27001のダブル認証による信頼性
✅ 金融・法務分野に特化した専門チームの配置
✅ 先行翻訳による同時開示の実現
✅ 翻訳メモリ・用語集の共同構築によるコスト最適化
まずは無料相談から
- 現在の英文開示状況のヒアリング
- 貴社に最適な翻訳範囲のご提案
- 具体的な費用見積もりの提示
- 実施スケジュールのシミュレーション
- 社内体制構築のアドバイス
有価証券報告書の英訳に関するご質問、お見積もり依頼は、アットグローバルのIR翻訳サービスページからお気軽にお問い合わせください。


