
翻訳×ネイティブチェックで差が出る 英語相場・料金と発注ステップ完全解説
「ネイティブチェックを入れるだけで、英文の印象がまるで変わる」――そう聞いたことはありませんか?
実際、翻訳文がいくら正確でも、ネイティブスピーカーの目から見ると「不自然」「違和感がある」と感じられることがあります。
そこで重要になるのが、ネイティブによる最終チェック。単なる誤り修正ではなく、文の響き・文化的ニュアンス・読み手の受け取り方まで磨き上げる工程です。
この記事では、翻訳とネイティブチェックの違いを明確にし、ネイティブスピーカーによる校閲(ネイティブチェック)が英語の自然さ・文化適合性・トーンまでどう高めるのかをわかりやすく解説します。
さらに、機械翻訳だけでは埋めにくいニュアンスの課題や、依頼先別の価格構造、納期に影響する条件など、実務で役立つ相場感も丁寧にご紹介します。
最後に、翻訳会社とフリーランスの選び方や失敗しない発注ステップまで、具体的なチェックポイントをお伝えしますので、ぜひ参考になさってください。
- ネイティブチェックの定義と翻訳・プルーフリーディングとの違い
- ビジネスにおける重要性と機械翻訳の限界
- 料金相場と価格決定要因(依頼先・専門性・納期など)
- 依頼先の選び方と発注から納品までの基本フロー
ネイティブチェックの定義と翻訳・プルーフリーディングとの違い

まず、翻訳プロセスにおける「ネイティブチェック」が具体的にどのような作業なのか、関連する用語との違いを明確にしましょう。これらを混同していると、適切な発注ができず、期待した品質が得られない可能性があります。
ネイティブチェックの定義
ネイティブチェックとは、その言語(例えば英語)を母国語として話す人、すなわち「ネイティブスピーカー」が、翻訳された文章(訳文)を読み、違和感のない自然な表現になっているかを確認・修正する作業を指します。
このプロセスの最大の目的は、単に「意味が通じる」レベルから、「その言語圏の人が読んで、スムーズに理解でき、好印象を与える」レベルへと品質を引き上げることです。言語そのものの正しさだけでなく、翻訳言語が使われている地域や文化に沿って、情報やニュアンスが正しく伝わるようにすることが重要です。
「翻訳」作業との違い
「翻訳」と「ネイティブチェック」は、プロセスの段階が異なります。
翻訳は、ある言語A(原文:例えば日本語)を、別の言語B(訳文:例えば英語)に「置き換える」作業です。この段階では、原文の意味や情報をできるだけ正確かつ適切に伝えるため、両言語の文法や語彙に関する専門知識が求められます。
一方、ネイティブチェックは、翻訳後に行われる品質向上のための評価・修正作業です。翻訳者が優秀であっても、第二言語として習得した場合、ネイティブスピーカーが持つ微妙な感覚や最新の言い回しを完全に再現するのは困難な場合があります。ネイティブチェックは、その差異を補完する重要な工程です。
つまり、「翻訳」が言語変換のプロセスであるのに対し、「ネイティブチェック」はその結果の品質をネイティブの視点で磨き上げるプロセスと言えます。
「プルーフリーディング」との違い
ここが最も混同されやすいポイントです。「ネイティブチェック」と「プルーフリーディング」は、どちらもチェック作業ですが、その視点と目的が異なります。
プルーフリーディング(Proofreading)とは、日本語で言えば「校正」にあたる作業です。主な目的は、文章内の「明らかな誤り」を発見し、修正することです。 具体的には、以下のような点をチェックします。
- スペルミス
- 文法上の誤り
- 誤字、脱字
- 句読点の使い方
- 単語の重複や欠落
プルーフリーディングは、原文(日本語)と訳文(英語)を突き合わせて「訳抜け」や「誤訳」がないかを確認する「バイリンガルチェック」と、訳文(英語)だけを読んで文法やスペルのミスを直す「英文校正」に分けられることもあります。
対して、ネイティブチェックは、プルーフリーディングの範囲を包含しつつ、さらに踏み込んだチェックを行います。日本語で言えば「校閲」に近い側面もあります。
文法的に「正しい」としても、それが「自然」とは限りません。ネイティブチェックでは、以下のような、より高度な視点で文章を評価します。
- 表現の自然さ: ネイティブスピーカーが日常的に使う、より自然な言い回しかどうか。
- ニュアンスの適切さ: 原文の持つ細かなニュアンス(丁寧さ、強調、皮肉など)が正しく伝わっているか。
- 文化的背景: その表現が、ターゲットとする地域の文化や習慣に照らして適切か。不快感を与えないか。
- トーン&マナー: 文章全体の調子(フォーマル、カジュアル、専門的、マーケティング的など)が、目的やターゲット読者に合っているか。
例えば、「ご迷惑をおかけしました」を “I caused you trouble.” と翻訳しても、文法的な誤りはありません。しかし、プルーフリーディングではOKとされても、ネイティブチェックでは、ビジネス上の謝罪としては直接的すぎる、あるいは状況によっては不十分と判断され、”We sincerely apologize for any inconvenience this may have caused.” のような、より適切で丁寧な表現への修正が提案されます。
ビジネスにおけるネイティブチェックの重要性と機械翻訳の限界

「最近のAI翻訳(機械翻訳)は非常に優秀だ。DeepLやGoogle翻訳を使えば、わざわざ高いお金を払ってネイティブチェックをする必要はないのでは?」 そう考える方もいるかもしれません。
しかし、結論から言えば、特にビジネスや学術研究など、高い品質と信頼性が求められる場面において、ネイティブチェックは依然として不可欠です。
ビジネスで不可欠な理由:細かなニュアンスと文化的背景の反映
ビジネスコミュニケーションにおいて、翻訳の「間違い」は、単なるタイプミスでは済みません。企業の信頼を失墜させ、商談を破談にし、法的な問題にさえ発展する可能性があります。
例えば、英語と一口に言っても、アメリカ英語とイギリス英語では、スペル(Color / Colour)、語彙(Elevator / Lift)、表現の好みが異なります。製品マニュアルやマーケティング資料をイギリス市場向けに展開する際、すべてがアメリカ英語のままだと、読者(顧客)は無意識のうちに「違和感」や「配慮の欠如」を感じ取るかもしれません。
また、文化的な背景の理解も不可欠です。日本語の「よろしくお願いします」や「お疲れ様です」といった、特定の文化に根ざした挨拶や表現は、そのまま直訳しても意味が通じないか、意図したニュアンスが伝わりません。
ネイティブチェッカーは、文法的な正しさだけでなく、こうしたターゲット市場の文化、習慣、ビジネス慣行を深く理解しています。原文の「意図」を汲み取り、ターゲット読者に最も響く、文化的にも適切な表現を選び抜くことができるのです。
これは、企業のブランドイメージを守り、効果的なグローバルコミュニケーションを実現するために不可欠なプロセスです。
機械翻訳(DeepL・Google翻訳)の限界
DeepLやGoogle翻訳に代表されるニューラル機械翻訳(NMT)の進化は目覚ましく、数年前とは比較にならないほど流暢な翻訳文を生成できるようになりました。しかし、現状のAI翻訳には明確な限界があります。
AIは、膨大な量のテキストデータを学習することで、「統計的に最もそれらしい」訳文を生成しています。しかし、AIは「言葉の意味」や「文脈」、「文化的背景」を人間のように深く理解しているわけではありません。
そのため、以下のような弱点があります。
- 文脈の無視: 前後の文脈を考慮せず、単語単位で直訳してしまい、文章全体として意味が通らなくなることがあります。
- 複数の意味を持つ単語の誤訳: 例えば “issue” という単語には「問題」「発行(する)」「(雑誌の)号」など多くの意味がありますが、文脈に合わない訳を選んでしまうことがあります。
- ニュアンスの欠如: 皮肉、ユーモア、あるいは非常に丁寧な謝罪など、原文が持つ繊細なニュアンスを汲み取ることができず、無味乾燥な、あるいは不適切な訳文になりがちです。
- ブランドボイスの欠如: 企業が持つ独自のトーン&マナー(ブランドボイス)を一貫して反映させることはできません。
機械翻訳は、概要を把握するための下訳や、社内の非公式なコミュニケーションには非常に有用です。しかし、顧客の目に触れる公式な文書や、企業のメッセージ性を込めたコンテンツの翻訳を、機械翻訳「だけ」に頼るのは非常に危険です。
【失敗事例】ネイティブチェック不足による誤訳
ネイティブチェック(または適切な翻訳プロセス)を怠ったために起きた有名な誤訳事例があります。
インプットされた情報にもあった、大阪メトロ(Osaka Metro)が2018年頃に公開した英語版サイトでの表記は、その典型例です。 このサイトでは、
- 堺筋線(さかいすじせん) → “Sakai Muscle Line”
- 御堂筋線(みどうすじせん) → “Midosuji Muscle Line”
などと翻訳されていました。 (参照:Yahoo!ニュース)
これは、機械翻訳が路線名の「筋」の部分を「筋肉(muscle)」と誤って理解し、そのまま訳出してしまったことが原因と考えられています。 「堺筋」「御堂筋」は固有名詞であり、「線」は路線を意味する “Line” です。
もし翻訳後に、日本語の固有名詞や地名に詳しいチェッカー(この場合は日本語ネイティブの知見も必要)や、少なくとも不自然な英語に気づくネイティブチェッカーがいれば、”Sakai Muscle Line” という奇妙な表記が公開されることは間違いなく防げたはずです。
この事例は話題になりましたが、これがもし医療機器のマニュアルや、重要な契約書であったなら、笑い事では済まされません。ネイティブチェックは、こうした致命的な誤りを防ぐための、最後の砦でもあるのです。
ネイティブチェックの料金相場と価格決定要因

ネイティブチェックの重要性は理解できたとして、次に気になるのは「いったい、いくらかかるのか?」という費用(相場)でしょう。 ネイティブチェックの料金は、依頼先や原稿の専門性、納期などによって大きく変動します。
料金が決まる仕組み
まず、翻訳・ネイティブチェックの料金がどのように決まるのか、その基本的な仕組みを理解しましょう。
文字単価(原文ベース)
日本語から英語へ翻訳する場合(日英翻訳)に最も一般的です。原文である日本語の「1文字あたり〇円」という形で計算されます。
単語単価(原文ベース)
英語から日本語へ翻訳する場合(英日翻訳)が一般的です。「原文の英語1単語あたり〇円」で計算されます。
文字単価・単語単価(訳文ベース)
ネイティブチェック「だけ」を単体で依頼する場合に使われることがあります。翻訳会社が翻訳したものではなく、自社で作成した英文や機械翻訳にかけた英文のチェックを依頼する際などです。「チェック対象の訳文1単語(または1文字)あたり〇円」で計算されます。
時給(タイムチャージ)
チェックの難易度や作業内容によって、1時間あたり〇円という時給で計算される場合もあります。
最低発注料金(ミニマムチャージ)
多くの翻訳会社では、最低発注料金(例:15,000円~30,000円)を設定しています。これは、原稿の量が非常に少なく(例えば、メール1通など)、単価計算では数千円にしかならなくても、発注管理や翻訳者の手配に一定のコストがかかるためです。
依頼先別の料金目安
では、具体的な料金の目安を、依頼先別に見ていきましょう。ここでは、ビジネス文書(一般)を日本語から英語へ翻訳し、ネイティブチェックまで行う場合を想定します。
翻訳会社に依頼する場合
品質管理の体制が整っており、ビジネス利用では最も一般的で安心な選択肢です。料金は高めですが、翻訳者の選定、ネイティブチェック、納期管理までをワンストップで請け負ってくれます。
| チェックの種類 | 相場価格 | 例 |
| ネイティブチェック単体(訳文のチェックのみ) | 日本語1文字あたり 10円~15円程度 | 例:訳文が英語1,000ワードの場合、1ワード15円~ で15,000円~ |
| バイリンガル対訳チェック(原文と訳文を照合) | 日本語1文字あたり 12円~18円程度 | 例:原文が日本語1,000文字の場合、1文字12円~ で12,000円~ |
| 高品質翻訳(翻訳+ネイティブチェック込み) | 日本語1文字あたり 15円~30円程度 | 例:原文が日本語3,000文字の場合、1文字20円なら60,000円 |
(※上記はあくまで目安です。複数の翻訳会社の料金を参考にしていますが、実際の料金は各社異なります。)
フリーランス(個人)に依頼する場合
クラウドソーシングサイト(Lancers、 CrowdWorksなど)や、翻訳者専門のマッチングプラットフォーム(Gengo、 Conyacなど)を通じて、フリーランスの翻訳者やネイティブチェッカーに直接依頼する方法です。
- 料金: 翻訳会社の中間マージンがないため、一般的に翻訳会社より2〜4割程度安価な傾向があります。
- 注意点: 品質は個人のスキルに大きく依存します。実績や評価(レビュー)を慎重に確認する必要があります。また、秘密保持契約の締結や、専門分野への対応可否も、すべて自分で判断・管理しなければなりません。
知り合いのネイティブに依頼する場合
社内の外国人スタッフや、個人的な知り合いのネイティブスピーカーに依頼する方法です。
- 料金: 最も安価(あるいは無料)で済む可能性があります。
- 注意点: この記事の下部で詳しく後述しますが、「ネイティブであること」と「プロのチェッカーであること」は全く別の問題です。文法知識や校正スキルが専門家レベルとは限らず、専門分野の知識も期待できません。社内の簡単なメールチェック程度なら良いかもしれませんが、公式な文書のチェックを依頼するのはリスクが高いと言えます。
料金に影響するその他の要因
上記の基本単価以外にも、以下の要因で料金は大きく変動します。
専門性
最も大きく影響する要因の一つです。一般的なビジネス文書に比べ、医療・医薬、法律(契約書)、特許、金融(IR)、高度なIT(AI)などの専門分野は、対応できる翻訳者・チェッカーが限られるため、単価が1.5倍~2倍以上になることもあります。
納期
通常よりも短い納期(特急、エクスプレス)を指定すると、割増料金(例:通常料金の20%〜50%増し)が発生することが一般的です。
レイアウト調整(DTP)
原稿がWordやテキストファイルではなく、PowerPointの図形内テキスト、Illustrator、InDesign、PDFなどの場合、翻訳後のレイアウト調整作業(DTP)が必要となり、ページ単価で別途費用が発生します。
チェックのレベル
単なるネイティブチェック(訳文のブラッシュアップ)なのか、原文と訳文を1文ずつ突き合わせて訳抜けや誤訳まで厳密にチェックする「バイリンガル対訳チェック」なのかによって、料金が変わる場合があります。
信頼できる翻訳会社を選ぶためのチェックポイント

料金相場がわかったところで、次に「どこに、どうやって頼めば失敗しないか」という、依頼先の選び方について解説します。
「ネイティブなら誰でもいい」わけではない理由
料金を安く抑えようとして、「知り合いのネイティブスピーカーに頼もう」と考えるのは早計です。
ネイティブスピーカーであれば、確かに「不自然な英語」には気づくことができます。しかし、それを「正しく、より適切な表現に修正できる」かどうかは、全く別のスキルセットが必要です。
私たち日本人は全員、日本語ネイティブですが、全員がプロの新聞記者やコピーライターのように、完璧な日本語の校正・校閲ができるわけではないのと同じです。 プロのネイティブチェッカーは、単に英語を母国語とするだけでなく、
- 高度な文法知識と文章構成能力
- 豊富な語彙力と、TPOに応じた使い分けのセンス
- 文章校正・校閲の専門的な訓練
- (案件によっては)対象分野に関する専門知識
これらを兼ね備えています。安易に「ネイティブだから」という理由だけで依頼すると、かえって分かりにくい文章になったり、元のニュアンスが失われたりするリスクさえあります。
依頼先の候補
ビジネス用途で、一定の品質を担保したい場合、現実的な依頼先の候補は以下の2つになるでしょう。
プロの翻訳会社
最も推奨される選択肢です。翻訳コーディネーターが案件の専門性や目的に合わせて最適な翻訳者とネイティブチェッカーを選定し、品質管理(QC)プロセス全体を管理してくれます。コストはかかりますが、その分、品質の安定性と信頼性、機密保持の面で安心です。
フリーランス・マッチングプラットフォーム
予算が限られている場合や、比較的単純な内容の場合に選択肢となります。ただし、発注者側(あなた自身)に、翻訳者のスキルを見極める目(実績、評価、専門分野の確認)が求められます。
翻訳会社選びのチェックポイント
ビジネスパートナーとして信頼できる翻訳会社を選ぶためには、料金の安さだけで比較してはいけません。見積もりを依頼する際には、以下の点を必ず確認しましょう。
専門分野
あなたが依頼したい文書の専門分野(例:医療、IT、法律、金融、観光)での翻訳実績が豊富かどうか。公式サイトの「対応分野」「導入事例」などで確認します。
ターゲット言語
単に「英語」ではなく、ターゲット市場に合わせた「アメリカ英語」「イギリス英語」などの地域指定に細かく対応できるか。
チェック体制
翻訳の品質を左右する最も重要なポイントです。「翻訳者が翻訳して終わり(セルフチェック)」ではないか。「翻訳者(日本人)+ネイティブチェッカー(外国人)」といった、必ず第三者によるダブルチェック、トリプルチェックの体制が標準工程に含まれているかを確認します。
実績
どのような企業や官公庁との取引実績があるか。同業他社や大手企業の事例があれば、信頼性の目安になります。
見積もりとトライアル
見積もりは無料か、また見積もりの内訳(翻訳料、チェック料、DTP料など)が明確か。また、本格的な発注の前に、品質を確認するための「トライアル翻訳(無料または有料)」に対応してくれるかどうかも、重要な判断基準です。
ネイティブチェック依頼の基本ステップ

最後に、実際に翻訳会社にネイティブチェックを含む翻訳を依頼する際の、具体的なステップを時系列で解説します。初めて依頼する方でも、この流れを掴んでおけばスムーズです。
ステップ1:問い合わせ・見積もり依頼
まずは、翻訳会社のウェブサイトにある見積もりフォームやメールアドレスから、連絡を取ります。このとき、できるだけ多くの情報を正確に伝えることが、スムーズで正確な見積もりを得るための鍵となります。
最低限、以下の情報を準備・伝達しましょう。
- 翻訳したい原稿(ファイル): Word、 Excel、 PowerPoint、 PDFなど、できるだけ確定した原稿を添付します。文字数(単語数)がわからないと、翻訳会社は見積もりを出せません。
- 言語の指定: 原文の言語(例:日本語)と、翻訳したい言語(例:アメリカ英語)。
- 翻訳の目的・用途: 「何のための翻訳か」を具体的に伝えます。
- (例:社内会議用の参考資料、顧客へのプレゼン資料、ウェブサイト掲載用の記事、プレスリリース、契約書など)
- 目的によって、翻訳のトーン(フォーマルさ)や、求められる厳密性が変わるため、非常に重要です。
- 希望納期: 「なるべく早く」といった曖昧な表現ではなく、「〇月〇日(金)の午後3時まで」のように、具体的な日時を伝えます。
- 仕上がりのイメージ: 特に指定がなければ翻訳会社に任せることになりますが、もし「ですます調(丁寧)」「である調(断定)」「マーケティング的な訴求力の高い表現」などの希望があれば伝えます。
- 参照資料(あれば): 過去に翻訳した関連文書、用語集、スタイルガイドなどがあれば、一緒に提出します。これにより、翻訳の品質とスピードが向上します。
ステップ2:契約・発注
翻訳会社から見積書が届いたら、内容をしっかり確認します。
- 料金(税別・税込)
- 納期(納品日)
- 作業内容(「ネイティブチェック込み」か、「バイリンガルチェック」か、など)
- 納品形態(Wordファイル、など)
内容に問題がなければ、メールや発注書(注文書)の送付をもって、正式に契約・発注となります。 この際、原稿に機密情報が含まれる場合は、発注前に秘密保持契約(NDA)の締結を翻訳会社に依頼しましょう。多くのプロ翻訳会社は、標準的なNDAの雛形を用意しています。
ステップ3:翻訳・チェック作業(翻訳会社の内部工程)
発注が完了すると、翻訳会社の内部で作業が開始されます。このプロセスは通常、依頼者からは見えませんが、品質を担保するために以下のような工程が踏まれています。
- コーディネーターによる人選: 依頼内容(専門分野、言語ペア)に基づき、最も適した翻訳者とネイティブチェッカーを選定します。
- 翻訳者による翻訳: 専門知識を持つ翻訳者が、原文の意図を汲み取りながら翻訳作業を行います。
- チェッカーによるチェック: 翻訳者とは別の第二の目(ネイティブチェッカーやバイリンガルチェッカー)が、原文と訳文を照合しながら、誤訳、訳抜け、スペルミス、文法ミス、そして表現の不自然さがないかを厳しくチェックし、修正します。
- レイアウト調整(DTP): PowerPointやIllustratorなどの原稿の場合、翻訳後のテキストを元のレイアウトにきれいに流し込みます。
- 最終確認: コーディネーターが、依頼内容(仕様)通りに仕上がっているか、抜け漏れがないかを最終確認します。
ステップ4:納品・検収
指定された納期までに、合意した納品形態(通常はメール添付)で翻訳物が納品されます。
納品されたら、依頼者側でも内容を速やかに確認(これを「検収」と呼びます)してください。 万が一、明らかな間違いや、意図と異なるニュアンスの表現があった場合、あるいは不明点があれば、すぐに翻訳会社にフィードバックをしましょう。信頼できる翻訳会社であれば、納品後のアフターフォロー(修正や質問への回答)にも誠実に対応してくれます。
アットグローバルのネイティブチェックサービスのご紹介
この記事で解説してきたように、高品質なネイティブ翻訳は、単なる「正しい英語」を超え、貴社の信頼性やブランドイメージを左右する重要なビジネス戦略です。
アットグローバルは、そのような高度なニーズに応え、これまで1,000社以上の企業様にサービスを提供してきました。IT関連文書、観光案内、金融・会計資料など、高度な専門知識が求められる分野において、経験豊富な翻訳者が「正確性」と「訴求力」を両立させた翻訳を提供します。そして経験豊かで十分な実績のあるネイティブによるチェックを行う体制を整えています。
アットグローバルとしては、ネイティブチェックのご依頼は翻訳のオプションとしてご用意しておりますが、もしネイティブチェックのみをご希望の方は、以下のリンク先よりお問い合わせください。見積もりをさせていただきます。
よくある質問(FAQ)
- 「Grammarlyのような高機能な文法ツールを使えば、プロによるネイティブチェックは不要になりますか?」
GrammarlyなどのAIツールは、文法ミス、スペルミス、基本的なスタイルの修正(受動態から能動態への変更提案など)において非常に強力な補助ツールです。しかし、プロのネイティブチェックを完全に代替することはできません。
AIは、文章が持つ「文脈」、その背景にある「文化的ニュアンス」、特定の業界で使われる「専門用語の適切な響き」、あるいはターゲット読者に合わせた「トーン&マナー」の微調整までは正確に汲み取れません。
AIは統計的に「正しい」文章は作れますが、プロのチェッカーは、読者の感情や理解度まで考慮した「最適な」文章へと磨き上げることができます。重要な文書ほど、この人間の感覚による最終的な調整が不可欠です。
- 「ネイティブチェックを依頼した場合、平均でどのくらいの期間(納期)で納品されますか?」
納期は、原稿の「分量(文字数や単語数)」、内容の「専門性」、そして「依頼先の体制」によって大きく変動します。
一般的な目安として、数千ワード(日本語で数千〜1万文字)程度のビジネス文書であれば、翻訳会社の標準的なプラン(翻訳+ネイティブチェック)で、発注から2〜3営業日程度が一般的です。もしネイティブチェック「だけ」を依頼する場合は、翻訳工程がないため、最短1営業日程度で完了する場合もあります。
ただし、特急プラン(追加料金が発生)を利用するか、あるいはフリーランスに直接依頼するかなど、条件次第で納期は大きく短縮・延長します。見積もり時に必ず希望納期を伝え、可能かどうか確認することが重要です。
- 「ネイティブチェックで修正された箇所について、修正の意図や理由を質問することはできますか?」
多くのプロの翻訳会社では、納品後の質疑応答に対応しています。修正意図の確認は、発注者側の学習にもつながるため、非常に有益です。依頼する際は、Wordの「変更履歴」機能を使って修正箇所が分かる形での納品を依頼すると、質問がスムーズになります。
ただし、サービスプランによっては、簡易なチェックプランでは質問対応がオプション(別料金)となる可能性もゼロではありません。「納品後の質問は〇回まで可能」などと規定がある場合もありますので、発注前に「修正意図に関する質問は可能か」を確認しておくと最も安心です。
- 「学術論文(ジャーナル投稿用)のネイティブチェックは、一般的なビジネス文書のチェックと何が違いますか?」
目的と求められる専門性が全く異なります。ビジネス文書のチェックは、読みやすさ、訴求力、ブランドイメージ、そして文化的に失礼がないかといった「コミュニケーションの円滑さ」が重視されます。
一方、学術論文のネイティブチェック(英文校閲)は、その分野の「専門用語が厳密に正しく使用されているか」、論理展開が明快で「アカデミックな文章作法に準拠しているか」、そして「投稿先ジャーナルの規定フォーマットに従っているか」が最重要視されます。
そのため、単に英語ネイティブであるだけでなく、その学術分野(例:医学、工学)の博士号を持つなど、高度な専門知識を持ったチェッカー(エディター)が担当するのが一般的です。
- 「ネイティブチェックを依頼すると、文章はどの程度書き換えられてしまうのでしょうか?原文のニュアンスが失われることはありませんか?」
これは、依頼時に発注者が「どこまでの修正レベルを求めるか」を明確に指示することでコントロールできます。
例えば、「文法ミスやスペルミスのみを修正する『校正(プルーフリーディング)』」を依頼すれば、原文のニュアンスはほぼ維持されます。一方、「より自然な表現への『ブラッシュアップ(ネイティブチェック)』」を依頼すれば、原文の意図を汲みつつも、より流暢な表現に書き換えられる箇所は増えます。
もし原文のスタイルや特定の言い回しを意図的に残したい場合は、発注時に「原文のニュアンスを最大限尊重し、文法的な誤りや決定的に不自然な箇所のみの修正を希望します」と具体的に伝えることが、過剰な書き換えを防ぐ鍵となります。
- 「機械翻訳(DeepLなど)の結果を、自分でできるだけネイティブ風に修正(ポストエディット)するコツはありますか?」
非ネイティブの方がネイティブ風に修正(ポストエディット)するのは限界がありますが、機械翻訳の「癖」を直すだけでも品質は向上します。
まず、日本語は主語を省略しがちですが、英語では主語(誰が、何が)を明確に補う必要があります。次に、機械翻訳が生成した不自然な直訳イディオム(例:「顔が広い」を “face is wide” と訳すなど)は、意味が通じる平易な表現に直します。
また、Google検索などで、その言い回しが実際にネイティブによって多用されているか(検索結果が多数ヒットするか)を簡易的に確認するのも有効です。ただし、これらは「誤解を減らす」ための応急処置と考え、重要な文書はプロに依頼するのが賢明です。
翻訳ネイティブチェックまとめ
- ネイティブチェックは訳文を母語話者の視点で自然さと文化適合性まで磨く後工程である
- 翻訳は意味の置換、ネイティブチェックは読者に自然な表現への最適化である
- プルーフリーディングは誤字・文法中心、ネイティブチェックはトーンやニュアンスまで確認する
- ビジネスでは地域差とブランドボイス反映のため必須である
- 機械翻訳は文脈・多義語・ニュアンスに弱く代替にならない
- 料金は文字/単語単価や時給、専門性・納期で変動する
- 依頼先は翻訳会社かフリーランスで、実績と第三者チェック体制を重視すべきである
- 流れは見積→発注→翻訳→チェック→納品が基本である



