
海外市場調査の方法7種|目的別の選び方と費用相場を解説
海外市場調査にはさまざまな方法がありますが、いざ調べ始めると「結局、自社はどの手法を選べばいいのか」「費用はどれくらいかかるのか」で迷う方が少なくありません。
この記事では、海外市場調査の代表的な方法7種を整理したうえで、最大のポイントである目的別の選び方をマトリクスで解説します。
さらに手法別の費用相場、現地調査で成功した企業事例、海外ならではの注意点まで、最新データをもとに網羅しました。
記事のポイント:
- 目的から手法を逆算する海外市場調査の選び方
- 調査方法7種それぞれの特徴と使いどころ
- 手法別の費用相場と費用を左右する要因
- 海外で成功した企業事例と失敗しないための注意点
この記事の監修者
アットグローバル グローバルリサーチ部 山田真誉
大学助手や自治体での行政実務を経て2021年11月に入社。現在は台湾を拠点に、プロジェクトマネージャー(PM)として案件管理を担っています。
実績面では、内閣府のイノベーションエコシステムや科学技術基本法の進捗状況調査をはじめ、消費者庁やJST等の官公庁調査案件を多数担当。特許庁や文部科学省の調査研究でもPMを務めており、科学技術分野や諸外国の法規制の整理、制度比較、定量・定性分析において実績を重ねています。
さらに、台湾支店の代表者として現地における業務全般を統括。民間企業との協働による日台間のクロスボーダーな共同プロジェクトの推進や市場リサーチを手掛けており、日台双方におけるリサーチ体制の維持・強化に努めています。
海外市場調査とは|海外進出の成否を分ける理由

海外市場調査とは、進出を検討する国や地域の市場規模・消費者ニーズ・競合・商習慣・法規制などを体系的に調べ、進出の意思決定とリスク低減に役立てる調査活動のことです。「現地のことを現地の目線で正しく知る」ための作業であり、進出の成否を大きく左右します。
国内で通用したやり方が海外でそのまま通用するとは限りません。価格感覚や味の好み、購買チャネル、宗教や生活習慣まで、日本との前提は大きく異なります。思い込みのまま進出して撤退に追い込まれる失敗の多くは、事前の市場理解の不足に原因があります。
海外市場調査は単なるコストではなく、撤退リスクを下げるための投資と捉えるのが適切です。
海外市場調査の目的と国内調査との違い
海外市場調査の目的は、大きく
- 市場の魅力度を測る
- 参入リスクを見極める
- 商品を現地に最適化する
の3つに整理できます。この目的が曖昧なまま始めると、データは集まっても意思決定に使えない調査になりがちです。
国内調査との最大の違いは、言語・文化・制度の壁が加わる点です。具体的には次のような違いがあります。
- 調査票や回答を現地語へ翻訳・ローカライズする必要がある
- 国によって信頼できる統計の種類や精度が大きく異なる
- 宗教・祝祭・商習慣を踏まえないと設問自体が成立しないことがある
- オンライン調査が普及していない地域では手法そのものを変える必要がある
こうした違いがあるため、海外市場調査は国内調査の延長ではなく、現地事情に通じた体制で設計することが欠かせません。
最新データで見る海外進出の現在地
足元の海外事業は底堅く推移しており、調査に基づく的確な参入の重要性はむしろ高まっています。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が2025年11月に公表した「2025年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編)」によると、2025年に営業利益で黒字を見込む日系企業は66.5%(前年比0.6ポイント増)と2年連続で増加し、赤字割合は16.6%と2019年以降で最も低い水準となりました。さらに今後1〜2年で現地事業を「拡大」すると回答した企業も46.2%(前年比1.0ポイント増)と、海外で稼ぐ日系企業の底堅さがうかがえます。
国内企業の海外志向も依然として強い状況です。ジェトロが2026年2月に公表した「2025年度 第24回 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」では、今後3年程度で最も重視する輸出先として米国が27.1%で首位を維持し、比較可能な2018年度以降で最高水準となりました。事業拡大を図る国・地域として米国を選択する企業は4年連続で最大となっており、地政学リスクが高まるなかでも日本企業の海外事業意欲は堅調に推移しています。
2025年版 中小企業白書でも、外需の取り込みが企業の収益力を押し上げていると指摘されています。海外に活路を求める流れは大企業だけのものではなく、限られた予算で勝率を上げるためにこそ、目的に合った市場調査が欠かせません。
海外市場調査の主な方法7種|特徴と使いどころ

海外市場調査の方法は、大きく
- 既存データを集める机上調査
- 人に尋ねる定量・定性調査
- 現場を確かめる調査
- 実際に売って試す調査
の4系統に分かれ、代表的な手法は次の7種です。それぞれ得意なことと費用・期間が異なるため、まずは違いを把握しましょう。
- デスクトップリサーチ(机上調査)
- アンケート調査
- インタビュー調査
- 現地視察
- フォーカスグループ
- オンラインコミュニティリサーチ
- 試験販売(テストマーケティング)
デスクトップリサーチ(机上調査)とは
デスクトップリサーチとは、インターネットや官公庁・公的機関のデータベース、各種報告書などの既存資料(二次データ)から情報を収集する調査です。市場規模や成長率、競合の概況、規制動向といったマクロな全体像を、低コストかつ短期間でつかむのに向いています。
ジェトロや各国政府の統計、業界団体のレポート、業界紙などが主な情報源です。たとえば「東南アジアの化粧品市場規模と成長率」「対象国の輸入規制や関税」といった基礎情報は、まず机上調査で押さえます。調査の出発点として最初に行い、ここで仮説を立ててから次の調査につなげるのが定石です。
一方、現地の生の声や潜在ニーズまでは分からず、公開統計の精度も国によって差があります。机上調査だけで意思決定するのは危険で、次に挙げる一次調査と組み合わせるのが前提だと考えてください。
アンケート調査とは
アンケート調査とは、設計した質問を多数の対象者に回答してもらい、数値として傾向を把握する定量調査です。「どのくらいの人が・どの程度」という規模感や比率を客観的に測れるため、商品の受容性や価格受容度、認知度の検証に適しています。
海外ではオンラインパネルを使ったネット調査が主流ですが、ネット普及率が低い地域では対面や電話の併用が必要です。
たとえば数百名規模で「この価格なら買いたいか」を複数国で比較すれば、有望市場の優先順位づけに使えます。設問や選択肢を現地語へ正しくローカライズしないと、同じ質問でも回答の意味がずれ、データの質が大きく揺らぐ点に注意が必要です。
インタビュー調査とは
インタビュー調査とは、対象者に1対1で深く質問し、行動の背景にある動機や本音を引き出す定性調査です。アンケートでは見えない「なぜそう感じるのか」という理由や、本人も気づいていない潜在ニーズを掘り下げられるのが強みです。
商品改良のヒントを得たい場面や、購入・非購入の理由を深く理解したい場面で力を発揮します。「なぜ競合ではなく自社製品を選んだのか」を5〜10名程度に深掘りするだけでも、アンケートの数字の裏にある物語が見えてきます。
現地語での自然な会話が前提となるため、文化的背景を理解した通訳・モデレーターの存在が結果の精度を左右します。
現地視察とは
現地視察とは、実際に対象国へ足を運び、店頭・売り場・街の様子・消費者の行動を自分の目で観察する調査です。資料やデータだけでは伝わらない「現地の空気」や陳列・価格・競合の実態を体感でき、仮説の検証や修正に直結します。
小売店の棚割り、競合商品の価格や訴求、人々の生活動線や購買の瞬間の表情などは、現地に立って初めて見えてきます。机上調査で立てた仮説が現地では的外れだった、と気づける場でもあります。
コストと時間はかかりますが、重要な投資判断の前には欠かせない手法です。後述する成功事例のように、現地に深く入り込むほど発見の質は高まります。
フォーカスグループとは
フォーカスグループとは、属性の異なる少人数(一般に6名前後)を集め、座談会形式で意見を交わしてもらう定性調査です。参加者同士の会話から発想が広がり、1対1のインタビューだけでは出てこない多様な反応や潜在ニーズを引き出せます。
新商品のコンセプト評価や広告表現・パッケージの受け止め方を探る場面に適しています。たとえば同じ広告コピーでも、現地では意図と違う印象を与えていないかを、その場の会話から確認できます。司会者(モデレーター)の進行力が成否を分けるため、現地の文化と言語に通じた人材の起用が重要です。
オンラインコミュニティリサーチとは
オンラインコミュニティリサーチとは、対象者を集めたオンライン上のコミュニティで、一定期間にわたり継続的に意見やフィードバックを収集する調査です。一度きりの調査では捉えにくい、時間の経過に伴う意識や行動の変化を追える点が特徴です。
新コレクションの反応を発売前から継続的に探る、ブランドのファンと対話しながら商品を育てる、といった使い方に向いています。地理的に離れた複数国の対象者を同時に巻き込めるため、海外調査と相性が良い手法です。
SNSの普及した市場では、比較的低コストで現地消費者の本音に触れられる選択肢にもなります。
試験販売(テストマーケティング)とは
試験販売(テストマーケティング)とは、限定した地域や期間で実際に商品を販売し、消費者の反応や売れ行きを確かめる調査です。アンケートで「買いたい」と答えることと、実際にお金を払って買うことは別であり、その差を本番前に検証できるのが最大の価値です。
価格設定や売り場での見え方、リピート率まで現実のデータで確認でき、全国・全域展開の前にリスクを大きく下げられます。特定の都市や一部の小売チェーンに絞って投入し、反応を見てから対象を広げるのが典型的な進め方です。
費用と手間は大きいものの、本格展開の手前で行う「最終チェック」として位置づけられる、最も実践的な手法です。
目的別に見る海外市場調査の選び方

海外市場調査は「知りたいことが何か」から手法を逆算して選ぶのが基本です。手法を先に決めるのではなく、目的に合った手法を当てはめることで、無駄な費用をかけずに必要な答えにたどり着けます。
7種の手法は万能ではなく、それぞれ得意な問いが決まっています。まずは下の対応表で、自社の目的に合う手法のあたりをつけてください。
目的と手法の対応マトリクス
知りたいこと(目的)ごとに、最適な手法は次のように整理できます。「市場規模なら机上調査」「ニーズの深掘りならインタビュー」というように、目的と手法はおおむね一対一〜数対一で対応します。以下の表に目的と手法の対応を整理します。
| 知りたいこと(目的) | 適した調査方法 |
|---|---|
| 市場規模・成長性を知りたい | デスクトップリサーチ(+公的統計) |
| 競合の状況を詳しく調べたい | デスクトップリサーチ+現地視察 |
| 顧客のニーズ・受容性を確かめたい | アンケート調査+インタビュー調査 |
| 商品が実際に売れるか確かめたい | 試験販売(テストマーケティング) |
| まだ見えていない潜在ニーズを探りたい | フォーカスグループ/インタビュー調査 |
| 反応の変化を継続的に追いたい | オンラインコミュニティリサーチ |
表を読むときのコツは、「定量で全体を測る手法」と「定性で深さを探る手法」を区別することです。市場規模・受容性・売れ行きといった“どれくらい”を知りたいなら机上調査・アンケート・試験販売、動機や潜在ニーズといった“なぜ”を知りたいならインタビュー・フォーカスグループ、と大きく振り分けられます。
この表はあくまで出発点です。実際には「市場規模を机上調査でつかみ、有望と分かった国でアンケートをかけ、最後に試験販売で確かめる」というように、目的が段階的に変わっていくのが一般的です。
予算が限られる場合は、まず机上調査とオンラインアンケートで候補を絞り、最も有望な1か国だけに現地調査・試験販売の費用を集中させると、投資効率が高まります。
段階的に組み合わせる海外市場調査の進め方
精度の高い意思決定をしたいなら、1つの手法に頼らず複数を段階的に組み合わせるのが王道です。安価で広く当たる調査から始め、対象を絞りながら深く・確実な調査へと進めることで、費用対効果を最大化できます。
典型的なステップは次の流れです。
- デスクトップリサーチで市場全体と候補国を把握する
- アンケート調査で候補国の需要・受容性を定量的に比較する
- インタビューやフォーカスグループで「なぜ」を深掘りする
- 現地視察・試験販売で本番前の最終検証を行う
前の段階で立てた仮説を次の段階で検証していくため、手戻りが少なく、調査費用の使いどころも明確になります。
ここで見落とされがちなのが、各段階で発生する「言語の壁」です。私たちアットグローバルが多言語アンケートや現地インタビューの設計・翻訳を支援する中でも、設問の訳し方一つで回答傾向が変わる場面を数多く見てきました。
定量から定性へ進むほど現地語の精度が結果を左右するため、調査設計の段階から多言語マーケティングの視点を組み込んでおくことをおすすめします。
海外市場調査の費用相場と費用を左右する要因

海外市場調査の費用は、手法と規模によって数十万円から500万円超まで大きく変動します。一般的な目安として、机上調査なら数十万円、本格的な現地調査を含むと1か国あたり100万〜400万円程度を見込んでおくとよいでしょう。
費用は「何を・どこまで知りたいか」で決まります。まずは手法別の目安を押さえ、自社の予算と目的のバランスを取りましょう。費用の抑え方や進行管理については、海外市場調査の費用とスケジュールの管理方法もあわせてご覧ください。
手法別の費用目安
調査会社が公開する情報をもとに、手法別のおおよその費用感を整理すると次のとおりです。あくまで目安であり、対象国や条件によって変動します。
| 調査方法 | 費用目安(1案件あたり) |
|---|---|
| デスクトップリサーチ(机上調査) | 30万〜100万円 |
| オンラインアンケート調査 | 50万〜200万円 |
| インタビュー調査(デプス) | 30万〜150万円 |
| フォーカスグループ(海外) | 1か国あたり数百万円規模 |
| 現地視察・現地訪問調査 | 100万〜500万円以上 |
| 試験販売・実行可能性調査 | 50万〜500万円 |
- (出典:Digima〜出島、Ipsos、INTAGEなど各調査会社の公開料金・コラムをもとに整理)
たとえばアジア3か国で各300名規模のオンライン調査を行うと150万〜250万円程度、欧米2か国の製品コンセプトテストでは250万〜400万円程度が一つの目安です。調査全体では、ライトなプランで1か国100万円〜、本格的な市場分析を含むと1か国400万円〜を見込む整理が一般的です。
費用が変動する5つの要因
海外調査の費用は、主に次の5つの要因で大きく上下します。見積もりを読むときは、この観点で内訳を確認すると判断しやすくなります。
- 対象国・地域の数(多いほど比例して増える)
- サンプル数(回答者が増えるほど謝礼・パネル費が増える)
- 設問数(多いほど設計・回答負荷とコストが上がる)
- 定量か定性か(インタビュー等の定性は通訳・会場費で高くなりやすい)
- 言語数・ローカライズの量(翻訳工程が増えるほど総額が膨らむ)
特に見落とされやすいのが言語数と通訳費です。対面調査では通訳費が1日あたり5万〜10万円程度かかることもあり、英語圏以外や専門分野では上振れします。また、BtoBや富裕層・専門家といった出現率の低い対象者を集める場合は、リクルートの難度が上がり費用も高くなります。
なお、調査費用は「高い・安い」だけで判断すべきではありません。準備不足のまま進出して撤退する場合の損失に比べれば、数百万円の調査費は十分に小さい保険といえます。費用は支出ではなく、失敗確率を下げる投資として捉えるのが適切です。
自社でできる範囲と外注すべき範囲
費用を抑えたいなら、机上調査の一部は自社で行い、専門性と現地対応が必要な調査を外注するのが現実的です。すべてを外注するのではなく、線引きをすることで予算を有効に使えます。
自社でできる範囲の例は次のとおりです。
- ジェトロのレポートや各国の公的統計(e-Stat等)の収集
- Googleトレンドなど無料ツールでの需要動向の把握
- 競合の公開情報・ECサイトの価格調査
一方、現地語でのアンケート設計・翻訳、現地でのインタビューや視察、サンプルの確保といった工程は、品質と信頼性の面から専門会社に任せるのが安全です。自社で集めた一次情報をもとに仮説を立て、検証の核心部分だけを外注すれば、限られた予算でも精度の高い調査が実現できます。
海外市場調査の成功事例|現地理解が成否を分ける理由

海外進出の成功事例に共通するのは、現地に深く入り込んで生活や食習慣を観察し、その発見を商品づくりに反映している点です。机上のデータだけでなく、現地調査で得た一次情報こそが成否を分けます。ここでは、日本企業が海外市場調査を起点に成功した代表的な2例を紹介します。
味の素「Masako」|インドネシア農村に入り込んだ現地調査
味の素は、インドネシア向けの風味調味料「Masako(マサコ)」の開発にあたり、駐在員が現地の家庭に徹底的に入り込み現地調査を行いました。これは「現地視察」を突き詰めた市場調査の好例です。
味の素グループの公式記録(「インドネシアで超有名!『Masako』の正体とは?」味の素ストーリー)によると、担当者はジャワ島・バリ島の農村部4カ所と都市部2カ所を約1カ月かけて巡回し、電気・ガス・水道もない地域にまで足を運んで、現地の家庭料理を食べ歩きながら調理の実態を調べ上げました。
この調査から、インドネシアの家庭で好まれる鶏や牛のだし文化を捉え、現地の味覚に合わせた調味料を開発。発売までに3年を費やした商品は、現在ではインドネシアの調味料市場で6割超のシェアを握る国民的ブランドに成長しています。先行する欧米企業の製品が都市部で広まる中、農村の食卓にまで入り込んだ調査の深さが、ローカライズの精度と圧倒的なシェアにつながった事例です。
日清カップヌードル|米国の食習慣の観察が商品を生んだ
日清食品の「カップヌードル」は、米国市場の食習慣を観察したことが商品コンセプトそのものを生んだ事例です。現地での観察という市場調査が、容器や食べ方という根幹のアイデアに直結しました。
創業者の安藤百福が米国を訪れた際、現地の担当者が袋麺を割って紙コップに入れ、熱湯を注いでフォークで食べる姿を目にしたことが、「カップ容器に入れフォークで食べる」というカップヌードルの発想につながったと伝えられています。日本の「丼と箸」という前提が通用しない現地の様子を観察したことが、グローバル商品の原型になりました。
その後も日清は各国の嗜好に合わせて味を現地化しており、近年では米国で朝食需要に着目した新フレーバーを投入しています。日経クロストレンドの報道によれば、この商品は大手小売チェーンで発売直後に高い販売実績を記録しました。観察から生まれたコンセプトを、継続的な現地適応で育て続けている好例といえます。
2つの事例から学べること
2つの事例から学べるのは、成功の起点が「現地で何が起きているかを自分の目と耳で確かめたこと」にある点です。日本の常識を持ち込むのではなく、現地の生活・食習慣・価値観をそのまま受け止め、商品を作り変えています。
これは前述した現地視察やインタビューが目指すものそのものであり、規模の大小を問わず再現できる姿勢です。自社の商品を海外に出す前に、「現地の人は、いつ・どこで・どのように使うのか」を具体的に描けるかどうかを、調査の到達点として意識しておきたいところです。
海外市場調査で失敗しないための注意点

海外市場調査で失敗しないためには、「言語・文化・対象設定・手法の適合性」という海外特有の落とし穴を事前に押さえることが重要です。国内と同じ感覚で進めると、集めたデータそのものが信頼できないものになりかねません。ここでは特に見落とされやすい3つの注意点を解説します。
現地語・調査票のローカライズ(翻訳だけでは足りない)
海外調査では、調査票を現地語に「翻訳」するだけでは不十分で、文化に合わせて意味を調整する「ローカライズ」が欠かせません。直訳された設問は、現地の人にとって不自然だったり、意図と違う意味で伝わったりして、回答の信頼性を損ないます。
たとえば日本語の「ちょうどよい」「やや満足」といった曖昧な程度表現は、言語によって対応するニュアンスが異なり、選択肢の段階感がずれてしまうことがあります。専門用語や商品カテゴリーの呼び方も国ごとに違います。
翻訳会社として多言語アンケートの設計を支援する中でも、設問の訳し方ひとつで回答分布が変わる場面は少なくありません。回答の選択肢や評価尺度も、現地で自然に受け取られる表現に整える必要があります。調査の精度を担保するには、現地語と調査設計の両方を理解した体制でローカライズすることが前提となります。
文化・宗教・祝祭への配慮
海外調査では、宗教・文化・祝祭への配慮を欠くと、調査の実施そのものが成り立たなくなります。タブーに触れる設問や、配慮を欠いた選択肢は、回答拒否や不正確な回答を招くからです。
具体的には、次のような点に注意が必要です。
- 食や生活に関わる宗教上の制約(ハラールなど)を踏まえた設問設計
- ラマダンや春節など、調査時期が回答に影響する祝祭の把握
- 政治・宗教・所得など、現地で尋ね方に配慮が要るテーマの扱い
これらは現地の常識を知らなければ気づかない落とし穴です。設問の内容だけでなく、調査を実施する時期や尋ね方まで、現地文化を理解したうえで設計する必要があります。
対象者設定(SEC)とオンライン調査が機能しない地域
海外調査では、対象者の設定基準と調査手法そのものを、現地の実情に合わせて見直す必要があります。日本の感覚で「都市部の一般消費者」と設定しても、現地の社会構造や通信環境が異なれば、狙った層に届かないことがあるからです。
新興国などでは、年収や職業・学歴をもとにした社会経済階級(SEC)で対象者を定義するのが一般的で、日本の「年齢・性別」中心の設計とは前提が異なります。狙う顧客が現地のどの階層なのかを定義しないまま調査すると、購買力のない層の声を集めてしまうこともあります。
また、ネット普及率の低い地域ではオンライン調査だけでは偏ったサンプルになりやすく、対面や電話を組み合わせる判断が必要です。「どの層に・どの手法で届けるか」を現地基準で設計することが、データの代表性を守る鍵になります。
加えて、机上調査で使う現地の公開統計は、国によって整備状況や精度に差がある点にも注意が必要です。数字を鵜呑みにせず、複数のソースを突き合わせたり、現地調査で裏づけを取ったりする姿勢が、誤った意思決定を防ぎます。これらの落とし穴の多くは、現地の言語と文化に通じた体制があれば未然に避けられるものです。
海外市場調査支援|アットグローバルの特徴と提供価値

海外市場調査を成功させる鍵は、現地の言語と文化を正しく理解したうえで調査を設計・実行できる体制です。株式会社アットグローバルは、翻訳・通訳・多言語マーケティング・海外現地リサーチをワンストップで提供し、調査票のローカライズから現地でのアンケート・インタビュー実施までを一貫して支援しています。
50以上の言語に対応してきた実績を背景に、単なる直訳ではなく、現地の人に自然に伝わる設問設計や、文化・宗教・祝祭に配慮した調査運用が可能です。とくに「現地語での定量・定性調査の精度を高めたい」「複数国を横断して比較したい」といった場面で、言語の壁による誤差を抑える役割を担えます。
さらに、調査で得た知見を現地向けのWebサイトや販促物の多言語化、異文化理解(CQ)にもとづく現地コミュニケーション設計にまでつなげられるのも、翻訳・多言語マーケティングを本業とする当社ならではの強みです。調査を「やって終わり」にせず、進出後の実行までを見据えて支援します。
海外進出のどの段階で、どの調査を、どの言語で行うべきか迷われている場合は、目的の整理から一緒に検討します。具体的な費用感は海外・国内リサーチサービスの料金でご確認いただけます。海外市場調査や多言語リサーチをご検討の際は、アットグローバル公式サイトよりお気軽にご相談ください。
海外市場調査の方法に関するよくある質問(FAQ)

- 海外市場調査は何から始めればよいですか?
-
まずは調査の目的を「市場規模を知りたい」「ニーズを確かめたい」など具体的に定めることから始めます。目的が決まれば適した手法が絞られます。多くの場合、低コストなデスクトップリサーチで全体像と候補国を把握し、そこから対象を絞って定量・定性調査へ進めるのが効率的です。
- 海外市場調査の費用はどれくらいかかりますか?
-
手法と規模により大きく異なります。机上調査は30万〜100万円程度、オンラインアンケートは50万〜200万円程度、現地視察を含む本格調査では1か国あたり100万〜400万円程度が目安です。対象国数・サンプル数・言語数が増えるほど費用は上がります。
- 市場調査は自社で行うべきですか、外注すべきですか?
-
公的統計や無料ツールを使った基礎情報の収集は自社でも可能です。一方、現地語での調査票設計や現地でのインタビュー・サンプル確保は専門性が高く、品質と信頼性の面から専門会社への外注が安全です。自社調査と外注を組み合わせると予算を有効に使えます。
- なぜ海外調査では翻訳だけでなくローカライズが必要なのですか?
-
直訳した設問は現地では不自然に伝わり、回答の信頼性を損なうためです。程度を表す表現や選択肢のニュアンス、専門用語の呼び方は言語ごとに異なります。文化に合わせて意味を調整するローカライズによって、初めて正確な回答が得られます。
海外市場調査の方法・選び方・費用まとめ|海外進出成功のポイント
- 海外市場調査とは、進出先の市場・消費者・競合・規制などを体系的に調べ、撤退リスクを下げるための投資である
- 代表的な調査方法はデスクトップリサーチ・アンケート・インタビュー・現地視察・フォーカスグループ・オンラインコミュニティ・試験販売の7種である
- 手法は先に決めず、「何を知りたいか」という目的から逆算して選ぶのが基本である
- 市場規模は机上調査、ニーズは定量+定性、売れ行きは試験販売というように、目的と手法は対応している
- 精度を高めるには単独の手法に頼らず、安価な調査から段階的に組み合わせるのが王道である
- 費用は手法と規模で変動し、本格的な調査は1か国あたり100万〜400万円程度が一つの目安である
- 味の素や日清の事例が示すように、現地を自分の目で観察した一次情報が成否を分ける
- 海外特有の言語・文化・対象設定の落とし穴は、現地語と文化に通じた体制で回避できる



