
海外展開の補助金【2026年最新版】中小企業が使える主要制度一覧|金額・補助率・申請方法を徹底解説
円安と国内市場縮小を背景に、中小企業の海外展開ニーズはかつてないほど高まっています。一方で、市場調査・現地法人設立・展示会出展・知的財産対策など、海外展開には多額の初期投資が必要です。
そこで活用したいのが、国・自治体・ジェトロが提供する「海外展開向け補助金」です。補助金制度の中には返済が不要で、最大4,000万円〜9,000万円規模の支援を受けられる制度も存在します。さらに途上国向けビジネスならJICAから最大2億円規模の支援も受けられます。
本記事では、2026年(令和8年度)に申請できる海外展開の補助金主要制度について、補助上限額・補助率・対象経費・申請窓口・最新スケジュールを表形式で網羅的に解説します。製造業・食品・IT業界別の活用ガイド、補助金以外の融資・保険・税制優遇制度、申請のコツ、よくある質問もまとめていますので、自社に最適な制度を見つける参考にしてください。
なぜ今、海外展開補助金の活用が重要なのか

具体的な制度紹介に入る前に、なぜ2026年が「補助金活用の好機」なのかを整理します。
① 国内市場縮小と海外需要への活路
日本の生産年齢人口は減少を続け、国内市場の頭打ちが多くの業界で顕在化しています。経済産業省・中小企業庁・ジェトロが連携して2022年12月から開始した「新規輸出1万者支援プログラム」は、まさにこの状況を踏まえたもので、新たに輸出に取り組む事業者を一気通貫で支援する体制が整備されています。(中小企業庁公式)
② 円安局面で輸出は追い風、ただし海外コストは増加
円安は輸出価格競争力を高める一方、海外旅費・現地代理店費・認証取得費・展示会出展費など、ドル建て・現地通貨建ての費用は割高になります。この円安コストを吸収する手段として補助金の重要性が増しているのが2026年の特徴です。
③ 政策の大型再編:2026年は「ものづくり補助金」進化の年
2026年度は「ものづくり補助金」「省力化投資補助金」「新事業進出補助金」が統合された新事業「ものづくり商業サービス省力化・革新的開発・新事業・海外展開促進事業」に再編される方針が中小企業庁から発表されています。予算額は約2,960億円と大規模で、特にグローバル枠は補助上限額・補助率ともに引き上げられる見込みとされています。(Digima 2026年最新解説)
つまり、2026年は海外展開補助金の支援が手厚くなる「攻めどき」と言えます。
海外展開で使える補助金一覧表【2026年最新版】

2026年度に申請可能な主要な海外展開関連補助金を一覧で比較します。自社の事業フェーズ(市場調査・販路開拓・設備投資・知財取得など)と規模に合わせて選んでください。
| 補助金名 | 補助上限額 | 補助率 | 主な対象経費 | 実施機関 |
|---|---|---|---|---|
| ものづくり補助金 グローバル枠 | 3,000万円(特例で最大4,000万円) | 1/2(小規模2/3) | 機械装置・システム構築費、海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費 | 中小企業庁 |
| 中小企業新事業進出補助金 | 標準7,000万円、賃上げ特例で最大9,000万円(下限750万円) | 1/2 | 機械装置費、システム構築費、建物費、広告宣伝費 | 中小企業庁 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 50万円〜250万円 | 2/3(赤字事業者は3/4) | ウェブサイト関連費、海外展示会出展費、旅費、新商品開発費、借料 | 中小企業庁・商工会議所 |
| INPIT外国出願補助金 | 300万円(1企業あたり) | 1/2 | 外国特許庁出願料、現地代理人費用、翻訳費 | INPIT・特許庁 |
| 中小企業等海外侵害対策支援事業(模倣品対策) | 400万円 | 2/3 | 調査費・対抗措置費 | ジェトロ・特許庁 |
| 冒認商標無効・取消係争支援事業 | 500万円 | 2/3 | 係争活動費 | ジェトロ・特許庁 |
| JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業(普及・実証) | 1億円〜2億円(※公募時期に注意) | 委託費形態 | 旅費、現地活動費、機材調達費、専門家費 | JICA |
| 市場開拓助成事業(東京都) | 300万円 | 1/2 | 国内外の展示会出展小間料、出展付随経費、広告費 | 東京都中小企業振興公社 |
※2026年度は補助金制度が再編期にあるため、申請時には必ずものづくり補助金総合サイトなど公式情報で最新の公募要領をご確認ください。
それでは各制度を詳しく見ていきましょう。
国の主要補助金を詳しく解説

3-1. ものづくり補助金「グローバル枠」|最大4,000万円・海外進出の最強支援
海外展開を目指す中小企業にとって、現状最も大型の支援制度がものづくり補助金のグローバル枠(正式名称:グローバル市場開拓枠)です。
制度概要(第23次公募基準)
- 補助上限額:3,000万円(大幅な賃上げ特例を達成した場合は最大4,000万円)
- 補助率:1/2(小規模事業者は2/3)
- 下限額:100万円
- 必須要件:単価50万円(税抜)以上の機械装置・システム構築費の設備投資
4つの申請類型
グローバル枠で支援される海外事業は次の4類型に分類されます。自社の事業内容に最も近いものを選択して申請します。
- 海外直接投資類型:海外子会社等での設備投資・M&Aなど。本社は国内に所在し、補助対象経費の1/2以上を海外支店または海外子会社の事業活動関連費用に充てることが要件。
- 海外市場開拓(輸出)類型:海外向け製品開発、越境ECサイト構築、海外展示会出展、海外向けマーケティングなど。最終販売先の1/2以上が海外顧客となる事業計画が必須。
- インバウンド市場開拓類型:訪日外国人向けサービス開発、多言語対応システム導入など。販売先の1/2以上が訪日外国人となることが要件。
- 海外事業者との共同事業類型:外国法人との共同研究・共同事業開発。成果物の権利の一部が補助事業者に帰属することが要件。
特に「海外市場開拓(輸出)類型」では、設備投資費に加えて海外旅費・通訳/翻訳費・広告宣伝/販売促進費まで補助対象となるため、ものづくり補助金の他の枠にはない強みがあります。UL認証・CE認証・HACCP取得費など、海外規制対応の費用も対象に含まれます。
第23次から賃上げ要件が強化(重要)
2026年2月6日公募開始の第23次から、給与支給総額の年平均成長率の基準が3.0%以上→3.5%以上に引き上げられました。さらに、事業所内最低賃金は事業実施都道府県の最低賃金+30円以上、3〜5年の事業計画期間中、毎年達成することが必要です。賃上げ目標未達の場合は補助金返還義務が発生するため、無理のない計画策定が重要です。
申請のポイント
- 海外事業に関する実現可能性調査(FS)の実施が必須
- 社内に海外事業の専門人材を有するか、外部専門家との連携体制を整える
- 計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る計画であること
- 採択率は概ね20〜30%と難易度が高め(22次は26.7%)
スケジュール(2026年)
- 第22次公募:2026年1月30日締切、採択発表は2026年4月下旬予定
- 第23次公募:2026年2月6日公募開始、申請受付2026年4月3日〜5月8日17:00、採択公表は2026年8月上旬予定
- 採択率:第22次は全体で37.5%(1,552者中582者採択)
かつての「JAPANブランド育成支援等事業」は、2022年度をもって、このグローバル枠(JAPANブランド類型)に統合されました。海外向け新商品の開発からブランディング・プロモーションまでを一貫支援する位置づけです。(中小企業庁公式)
3-2. 中小企業新事業進出補助金|最大9,000万円・大型の海外進出投資に
事業再構築補助金の後継として2025年に新設されたのが中小企業新事業進出補助金です。新市場・新事業への進出を支援する制度で、海外展開もその一例として申請可能です。
制度概要(第3回公募基準)
- 標準補助上限額(従業員規模による):
- 20人以下:2,500万円(賃上げ特例3,000万円)
- 21〜50人:4,000万円(特例5,000万円)
- 51〜100人:5,500万円(特例7,000万円)
- 101人以上:7,000万円(特例最大9,000万円)
- 下限:補助対象経費1,500万円未満(補助金額750万円未満)は対象外
- 補助率:1/2
- 必須経費:「機械装置・システム構築費」または「建物費」のいずれかが必須
- 対象経費:機械装置費、システム構築費、建物費、広告宣伝・販路拡大費 など
賃上げ特例の要件(最大上乗せ条件)
- 給与支給総額を年平均6.0%以上増加
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上にアップ
これらを達成すると、最大9,000万円まで上限が引き上げられます。海外現地法人の設立や大型工場建設、海外向け新商品の量産設備整備など、桁違いの投資を計画する企業向けの制度です。
第3回公募スケジュール(2026年)
- 公募開始:2025年12月23日
- 申請受付:2026年2月17日〜3月26日18:00
- 採択発表:2026年7月頃予定
参考:中小企業基盤整備機構の中小企業新事業進出補助金特設サイト
3-3. 小規模事業者持続化補助金|海外展示会出展に最大250万円
小規模事業者(従業員5名以下の商業・サービス業/20名以下の製造業)にとって最も使いやすい補助金が持続化補助金です。海外展示会出展や越境ECも補助対象になります。
制度概要(第19回公募基準)
- 補助上限額:通常50万円
- インボイス特例適用:+50万円上乗せ
- 賃金引上げ特例適用:+150万円上乗せ
- 両特例適用:最大250万円
- 補助率:2/3(赤字事業者の賃金引上げ特例適用時は3/4)
- 対象経費:機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費
海外展開での活用例
- 海外展示会への出展料・渡航費
- 越境ECサイトの構築・多言語対応費用(ウェブサイト関連費は申請額の制限あり)
- 海外向けパンフレット・WEBサイトの翻訳費
- 海外向けプロモーション動画の制作費
申請には商工会・商工会議所の支援を受けることが前提となるため、地域の窓口に相談しながら進めるのが効率的です。「マル経融資」(小規模事業者経営改善資金、無担保・無保証・限度額2,000万円)との併用相性が良い点も魅力で、低利率の融資と補助金を組み合わせて資金調達できます。
2026年スケジュール
第19回公募:2026年1月28日公募要領公開、3月6日申請受付開始、4月30日17:00締切
3-4. INPIT外国出願補助金|海外特許・商標取得費の半額を補助
海外展開で見落とされがちなのが知的財産権の確保です。日本で特許・商標を取っていても、海外では別途出願しなければ権利が発生せず、現地企業による「冒認出願(先取り)」のリスクがあります。
従来ジェトロが実施していた「中小企業等外国出願支援事業」は令和5年度(2024年3月)で終了し、令和7年度からINPIT(独立行政法人 工業所有権情報・研修館)が実施する「INPIT外国出願補助金」に移管されました。あわせて、特許庁の「海外出願支援事業」は引き続き各都道府県等中小企業支援センターが地域実施機関として実施しています。両者は別申請ですが、1企業あたりの補助上限額は両方の合計額で計算されます。
制度概要
- 補助上限額:1企業あたり300万円(INPITと地域実施機関の合計)
- 特許出願:1案件150万円
- 実用新案・意匠・商標出願:1案件60万円
- 冒認対策商標出願:1案件30万円
- 補助率:1/2
- 対象経費:外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費 など
- 対象:海外への事業展開を計画している中小企業者
- 申請窓口(2系統):
特許だけでなく、ハーグ協定に基づく意匠の国際出願、マドリッド協定議定書に基づく商標国際出願も対象です。地域団体商標の外国出願については商工会議所、商工会、NPO法人等も応募できます。
INPIT外国出願補助金は2025年度から年4回程度の公募が実施されており、製品ローンチや海外展開のタイミングに合わせてタイムリーに申請できるようになりました。海外で模倣被害に遭う前に、計画的な権利取得に活用しましょう。
3-5. 中小企業等海外侵害対策支援事業|模倣品対策・係争に最大500万円
すでに海外で模倣品被害や商標冒認、係争に巻き込まれている企業向けの支援制度がジェトロから提供されています。
① 模倣品対策支援事業
- 上限額:400万円|補助率:2/3
- 海外での模倣品流通状況調査や模倣品業者への対抗措置にかかる費用が対象
② 冒認商標無効・取消係争支援事業
- 上限額:500万円|補助率:2/3
- 海外で現地企業に不当に商標を先取りされた場合、その権利取消の係争活動費用が対象
- 参考:ジェトロ公式サイト
③ 防衛型侵害対策支援事業
- 上限額:500万円|補助率:2/3
- 外国企業から権利侵害として訴えられた場合の対抗措置費用
- 参考:ジェトロ公式サイト
これらは賃上げ実施企業に対する加点措置(給与総額または1人あたり平均受給額が1.5%以上増加)もあるため、賃金引上げ計画とセットで申請すると採択率が高まります。
3-6. JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)|途上国ビジネスに最大2億円
開発途上国・新興国市場をターゲットとする企業に強力なのが、JICA(国際協力機構)の中小企業・SDGsビジネス支援事業です。一般に「JICA Biz」と呼ばれます。
JICA公式サイトでは現時点(2026年5月時点)で「現在、公募は行っておりません」と記載されています。本制度は年度ごとに公示があり、過去には毎年9月頃に新規公募が実施されています。最新情報はJICA公式サイト「公示・募集情報」で随時確認してください。
制度概要
- 対象国:JICAの在外拠点が設置されているODA対象国(アジア、大洋州、中南米、アフリカ、中東、欧州の途上国)
- 支援タイプ:
- ニーズ確認調査:現地基礎情報収集・ニーズ確認・ビジネスモデル検証
- ビジネス化実証事業:ビジネスモデルの精緻化・事業計画策定
- 普及・実証・ビジネス化事業(中小企業支援型):上限1億円、大規模/高度実証で1.5億円、インフラ整備技術推進または地域産業集積海外展開推進案件で最大2億円
- 普及・実証・ビジネス化事業(SDGsビジネス支援型):上限5,000万円
- 対象分野:全分野
- 事業期間:1年〜3年程度
JICA Bizの強み
- JICAは世界約100カ所の拠点を有し、現地パートナーアクセスや途上国政府・自治体・業界団体への紹介が可能
- 開発途上国でのビジネスに造詣の深いコンサルタントからアドバイスを受けられる
- 採択された場合、JICA事業との連携可能性も検討できる
ASEAN、南アジア、アフリカなどのグローバルサウス諸国でのビジネスを計画している企業は、ものづくり補助金グローバル枠よりJICA Bizの方が適合する場合があります。
3-7. 各都道府県の海外展開補助金|小回りの利く地域密着支援
国の制度に加えて、各都道府県・市区町村が独自に海外展開補助金を実施しています。
東京都の代表的制度
【市場開拓助成事業】(東京都中小企業振興公社)
- 助成限度額:300万円|助成率:1/2
- 対象経費:国内外の展示会・見本市出展小間料、出展付随経費、新聞/雑誌等広告費
- 対象:東京都や公社の評価・認定を受けた製品、または成長産業分野の自社製品・サービス
- 令和8年度申請期間:2026年5月15日〜5月29日17:00(Jグランツ電子申請)
- 参考:東京都中小企業振興公社
【海外展開支援】(東京都産業労働局・ジェトロ・信金中央金庫等)
- 東京都中小企業制度融資の申込予定者向けの支援パッケージ
- ジェトロ・信金中央金庫の有償サービスが1社累計100万円まで無償になる仕組み
- 参考:東京都産業労働局
その他の自治体補助金例
- 愛知県「海外販路開拓支援事業補助金」
- 宮城県「ものづくり産業海外販路開拓支援事業補助金」
- 大阪府堺市「グローバル展開促進事業補助金」
- 鹿児島県志布志市「コンテナ貨物輸出入助成」(最大300万円)
自治体補助金は上限額が数十万円〜100万円と比較的小規模ですが、初期段階の市場調査や展示会出展に使いやすいのがメリットです。自治体によって制度が違うので、お住まいの自治体の産業労働局や商工会議所で情報を得ることが出来ます。
3-8. 新規輸出1万者支援プログラム|輸出初心者を一気通貫サポート
補助金そのものではありませんが、海外展開を初めて行う企業向けの総合支援プログラムとして絶対に押さえておきたいのがこちらです。
経済産業省・中小企業庁・ジェトロ・中小機構が連携し、輸出にチャレンジする企業を一気通貫でサポートします。
プログラムの主な支援内容
- ジェトロのコンシェルジュによる個別カウンセリング(無料)
- 中小機構による伴走支援・経営計画策定支援
- 海外展示会・商談会出展支援
- 越境ECサイト出展支援(JAPAN MALL、Japan Street等)
- 海外バイヤーとのマッチング
- 上記の補助金(ものづくり補助金、持続化補助金、外国出願補助金等)の紹介
「補助金を申請したいが、自社にどれが合うか分からない」という段階の企業は、まずこのポータルサイトに登録してカウンセリングを受けるのが最短ルートです。ものづくり補助金グローバル枠でも、本プログラム登録が加点項目に設定されているため、申請を検討するなら早めに登録しておくと有利です。
2026年度も新輸出大国コンソーシアム事業パートナーによるハンズオン支援の募集が継続されています。また2026年4月には農林水産物・食品向けの「日本の食輸出1万者支援プログラム」も新たに開設されました。
海外進出フェーズ別|補助金活用ロードマップ

海外展開はフェーズごとに必要な投資と適した補助金が変わります。自社が今どの段階にあるかを確認し、最適な制度を組み合わせましょう。
フェーズ1:検討・情報収集段階
やるべきこと:海外展開の方向性決定、対象国・市場の絞り込み、自社製品の海外通用性確認
おすすめ制度:
- 新規輸出1万者支援プログラム(無料カウンセリング)
- ジェトロ貿易投資相談(無料)
- 中小機構「海外展開ハンズオン支援」(無料の伴走支援)
このフェーズではまず無料の支援を最大活用します。何の市場が狙えるかが固まる前に補助金を申請しても採択されません。
フェーズ2:市場調査・FS段階
やるべきこと:現地市場調査、競合分析、現地パートナー候補のリストアップ、製品の現地適応検討
おすすめ制度:
- 小規模事業者持続化補助金(市場調査委託費・現地視察渡航費に活用)
- JICA Biz「ニーズ確認調査」(途上国向けビジネスの場合)
- 市場開拓助成事業(東京都など自治体)
特に現地一次情報の収集は事業計画書の説得力を大きく左右します。後述の事業計画書の書き方とも関連しますが、このフェーズでの調査投資はその後の補助金審査の通過率を上げる重要な布石です。
フェーズ3:販路開拓・知財取得段階
やるべきこと:海外展示会出展、越境EC立ち上げ、特許・商標の海外権利化、現地代理店との交渉
おすすめ制度:
- 小規模事業者持続化補助金(海外展示会出展費)
- INPIT外国出願補助金(特許・商標の海外権利化)
- 市場開拓助成事業(展示会出展・広告費)
- ものづくり補助金グローバル枠(海外市場開拓類型)(越境ECサイト構築、海外向けマーケティング)
このフェーズで先に知財の海外権利化を済ませるのが鉄則です。展示会で発表した後に冒認出願されると、後の対応コストが跳ね上がります。
フェーズ4:本格進出・拠点設立段階
やるべきこと:海外子会社設立、現地工場建設、本格的な販売体制構築、量産設備投資
おすすめ制度:
- ものづくり補助金グローバル枠(海外直接投資類型)(最大4,000万円)
- 中小企業新事業進出補助金(最大9,000万円)
- JICA Biz「普及・実証・ビジネス化事業」(途上国向け、最大2億円)
- 日本政策金融公庫「海外展開・事業再編資金」(融資、最大7億2,000万円)
このフェーズでは桁違いの投資が必要になるため、補助金と融資の組み合わせで資金調達するのが現実的です。
業種別|海外展開補助金おすすめガイド

業種ごとに海外展開の課題と必要な投資は大きく異なります。代表的な業種別の補助金活用パターンを紹介します。
5-1. 製造業の海外展開補助金活用
製造業は他業種と比べて、設備投資・海外規制対応・現地工場設立など、必要な資金規模が大きいのが特徴です。
おすすめの組み合わせ
- 大型投資(海外子会社設立・現地工場新設) → 中小企業新事業進出補助金(最大9,000万円)
- 海外向け製品開発+設備導入 → ものづくり補助金グローバル枠(最大4,000万円)
- 特許・意匠の海外権利化 → INPIT外国出願補助金(最大300万円)
- 海外展示会への初出展・FS調査 → 小規模事業者持続化補助金(最大250万円)または市場開拓助成事業
製造業特有の対象経費
ものづくり補助金グローバル枠では、製造業に特化した以下の経費が補助対象になります。
- 海外向け製品の生産設備導入費
- 海外規制対応のための追加設備投資(UL認証、CE認証、HACCP等の認証取得費含む)
- 越境ECサイト構築・運営費
- 海外展示会出展費(旅費・通訳費含む)
サプライチェーン強靭化なら「グローバルサウス事業」
ASEAN等での生産拠点多元化を計画している製造業には、ジェトロが事務局を務める「海外サプライチェーン多元化等支援事業」も選択肢です。設備導入・FS調査・実証事業に対して経費の一部が補助されます。(ジェトロ公式サイト)
5-2. 食品・農林水産業の海外展開補助金活用
食品・農林水産物は政府が「2030年までに輸出額5兆円」を掲げる重点産業です。
おすすめの組み合わせ
- 越境EC・海外バイヤーとの商談 → ジェトロ「JAPAN MALL」「Japan Street」(無料/登録制)
- 海外展示会出展 → 小規模事業者持続化補助金、市場開拓助成事業
- HACCP・有機JAS等の認証取得 → 農林水産省「有機JAS認証、GAP等認証取得等支援事業」
- 本格的な海外向け製品開発・設備投資 → ものづくり補助金グローバル枠
ジェトロが2026年4月に開設した「日本の食輸出1万者支援プログラム」では、農林水産物・食品の輸出拡大に関わる施策が一元的に案内されます。(ジェトロ公式サイト)
5-3. IT・サービス業の海外展開補助金活用
ソフトウェアやSaaS、コンサルティングサービスの海外展開も補助金対象です。
おすすめの組み合わせ
- 海外向けサービスの多言語化・現地化 → 小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金グローバル枠
- 越境ECプラットフォームの構築 → ものづくり補助金グローバル枠(海外市場開拓類型)
- 海外現地法人設立・現地スタッフ雇用 → 中小企業新事業進出補助金、日本政策金融公庫融資
- 商標の海外権利化 → INPIT外国出願補助金
ものづくり補助金は名前から誤解されがちですが、ITサービス・コンサルティング業も対象です。実際に「海外市場向け研修管理システムの開発」「グローバル展開向けSaaS化」「ベトナム医療機関向けクラウド型統合システム」などの採択事例があります。(東京経営サポーター)
5-4. 伝統工芸・地域産品の海外展開補助金活用
地域の伝統工芸や特産品の海外展開には、JAPANブランド色の強い支援メニューが向いています。
おすすめの組み合わせ
- 海外向けブランディング・新商品開発 → ものづくり補助金グローバル枠(JAPANブランド類型)
- 地域団体商標の海外権利化 → INPIT外国出願補助金(商工会議所・商工会・NPO法人も対象)
- 海外展示会出展 → 市場開拓助成事業、小規模事業者持続化補助金
補助金と助成金の違い|混同しがちなポイントを整理

「海外展開 補助金」と「海外進出 助成金」を同義に使う方も多いですが、両者には重要な違いがあります。
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 受給可能性 | 競争的審査あり(採択率20〜40%程度) | 条件を満たせば原則受給可能 |
| 金額規模 | 数百万円〜数千万円と大きい | 比較的小さいケースが多い |
| 主な所管 | 経済産業省・中小企業庁・自治体 | 厚生労働省(雇用関係)など |
| 申請の難易度 | 事業計画書・予算書など準備が必要 | 比較的簡素 |
| 海外展開関連 | ものづくり補助金、新事業進出補助金 など | 厚労省系の助成金は海外展開には少ない |
ただし、ジェトロや東京都の海外関連支援は「助成金」と呼ばれているものの、実態としては「審査あり・上限あり」の補助金型です。「海外展開 助成金」というキーワードで検索しても、本記事で紹介した制度がほぼそのまま該当します。
補助金以外の海外展開支援制度

海外展開の資金調達は補助金だけではありません。融資・保険・税制優遇を組み合わせることで、補助金の限界を補えます。
7-1. 日本政策金融公庫「海外展開・事業再編資金」
日本政策金融公庫は政府系金融機関として、海外展開を計画する企業に有利な条件で融資を提供しています。
- 融資限度額:中小企業事業で最大7億2,000万円(直接貸付)/国民生活事業で7,200万円
- 対象:取引先の海外進出、原材料の供給事情、労働力不足、国内市場の縮小などにより海外展開する企業
- 特徴:長期・低利・固定金利
- 参考:日本政策金融公庫「海外展開ゼロイチ+」
補助金は「後払い・採択審査あり」のため、立替資金や採択前の準備資金として公庫融資を組み合わせるのが定石です。
7-2. 挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
新事業展開・海外展開・事業再生等に取り組む企業向けの資本性ローンも用意されています。財務体質の強化や、ベンチャーキャピタル・民間金融機関からの資金調達の円滑化を目的としており、決算上は資本とみなされる特殊な融資です。
参考:挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)|日本政策金融公庫
7-3. NEXI(日本貿易保険)の貿易保険
海外取引にはカントリーリスク(戦争・内乱・代金回収不能)がつきものです。NEXIの貿易保険を組み合わせることで、輸出代金回収リスクを軽減できます。新規輸出1万者支援プログラムからもNEXIへの紹介が受けられます。
参考:日本貿易保険(NEXI)
7-4. 海外現地法人税制・移転価格税制対応
海外進出後は移転価格税制や外国子会社配当益金不算入制度など、税務面の対応が必要になります。経済産業省や自治体が実施する税理士派遣・専門家相談(無料)を活用しましょう。
採択を勝ち取る事業計画書の書き方

補助金申請の成否を分けるのは事業計画書の質です。具体的な書き方のポイントを解説します。
8-1. 事業計画書に必ず盛り込むべき5要素
① 進出先・対象顧客・数値目標の具体化
「海外で売上を伸ばす」ではなく「○○国の△△市場で、自社製品Aを3年後に年間1,000万円販売する」のように、定量的に書きます。
- 進出国名(複数なら優先順位を付ける)
- 対象セグメント(B2B/B2C、年齢層、価格帯)
- 売上目標(年次別に最低3年分)
- シェア目標(市場規模に対する%)
② 市場分析と市場機会の根拠
進出先の市場規模、成長率(CAGR)、需要トレンド、規制動向を一次情報・二次情報を組み合わせて示します。
- 公的データ(ジェトロ調査レポート、現地政府統計)
- 業界レポート(民間調査会社)
- 現地ヒアリング(現地パートナー候補・既存取引先)
③ 競争優位性の明示
「なぜあなたの製品・サービスが現地で選ばれるのか」のストーリーを論理的に書きます。
- 自社の技術力・品質・デザインなどの強み
- 競合との比較(価格・品質・機能・ブランドの4軸)
- 模倣困難性(特許・ノウハウ)
④ 実行体制と専門性
審査員は「この企業は本当に海外事業を完遂できるのか」を見ています。
- 海外事業責任者の経歴・語学力
- 外部専門家(ジェトロ、認定支援機関、コンサルなど)との連携
- 現地パートナー(候補)の信頼性
⑤ 数字で語る財務計画
- 設備投資額・運転資金の根拠
- 売上・利益のシミュレーション(楽観・標準・悲観の3シナリオ)
- 補助金がなくても事業継続可能であることの説明(補助金は「後押し」)
8-2. 採択率を高める5つの具体的アクション
① 賃上げ要件・加点措置への対応
2026年のものづくり補助金第23次では、給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、事業所内最低賃金+30円以上が基本要件です。さらに、最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例を満たすと補助率が1/2→2/3に引き上げられるため、採算が合うなら積極的に活用しましょう。
② 採択率の現実を理解する
ものづくり補助金の第22次締切分の採択率は37.5%(1,552者中582者採択)でした。落ちる企業の方が多いため、不採択になっても再申請する前提でスケジュールを組みましょう。
③ 専門家・支援機関の活用
- ジェトロのコンシェルジュ(無料)
- 中小機構の専門家(無料)
- 商工会議所・商工会の経営指導員(無料)
- 認定経営革新等支援機関(有料コンサル)
④ GビズIDの早期取得
電子申請にはGビズIDプライムが必須で、取得に2〜3週間かかります。申請を決める前から取得しておくのが鉄則です。
⑤ 「事業計画書は1人で書かない」
事業計画書は社内の経営者・経理担当・営業担当・技術担当の意見を統合して書くべきものです。一人で書くと数字の整合性や実現可能性で穴が出ます。
よくある失敗事例と注意点

失敗事例①:交付決定前の発注
事例:A社は採択通知が出る前に、海外向けの設備を発注。後日「交付決定前の発注は対象外」と告げられ、自費負担に。
対策:必ず交付決定通知の受領後に発注・契約・支払いを行います。
失敗事例②:賃上げ未達による返還請求
事例:B社は大幅な賃上げ特例で補助上限を引き上げたが、業績悪化で給与支給総額の年平均成長率を達成できず、上乗せ部分の返還を求められた。
対策:実現可能な範囲で賃上げ目標を設定し、達成できないリスクを織り込んで計画します。
失敗事例③:知財対策を後回しに
事例:C社は中国の展示会で新製品を発表した後、現地企業に商標を冒認出願された。冒認商標無効化に500万円・2年を要した。
対策:海外展開の最初の段階でINPIT外国出願補助金を活用し、先に商標・特許の海外権利化を完了させる。
失敗事例④:実績報告で経費が認められない
事例:D社は補助金の対象経費に含まれない海外接待費・社員の給与を計上し、実績報告で減額された。
対策:公募要領の「対象経費」「対象外経費」を熟読し、不明点は事務局に事前確認します。
その他の注意点
- 補助金は後払いが原則:事業実施後に経費を立て替え、実績報告を経て後日入金されます。資金繰りが厳しい場合は、補助金を担保とした「つなぎ融資」を金融機関に相談しましょう。
- 使途は厳密に管理される:事業計画書に記載した用途以外への流用は認められず、目的外使用が判明すると返還を求められます。
- 報告義務が継続する:補助金交付後も、進捗報告・効果報告・5年間のフォローアップ調査が求められるケースがあります。
よくある質問(FAQ)

まとめ|2026年は海外展開補助金の活用がより重要に

海外展開を考える中小企業にとって、2026年は支援制度の再編期であり、攻めどきです。「ものづくり補助金」「省力化投資補助金」「新事業進出補助金」が統合された新事業「ものづくり商業サービス省力化・革新的開発・新事業・海外展開促進事業」に再編される予定であり、グローバル枠は補助上限額・補助率ともに向上する見込みです。(中小企業庁発表 / Digima)
海外展開補助金活用の鉄則
- 自社のフェーズに合った制度を選ぶ:市場調査段階なら持続化補助金、本格進出ならものづくり補助金グローバル枠、大型投資なら新事業進出補助金、途上国向けならJICA Biz
- 早めにGビズIDを取得する:電子申請に必須・取得に2〜3週間
- 数字で語れる事業計画書を作る:定量的な目標と市場分析が採択の鍵
- 新規輸出1万者支援プログラムにまず登録:無料カウンセリングで最適な制度を提案してもらえる。ものづくり補助金グローバル枠でも加点項目に
- 補助金と融資・保険を組み合わせる:補助金は後払いのため、日本政策金融公庫融資やNEXI貿易保険との併用で資金繰りを盤石に
- 市場調査・パートナー選定は専門家を活用:補助金で資金は得られても、海外市場で勝てなければ意味がない
海外展開を成功に導く第一歩は「正確な市場調査」から
補助金は資金面の強力なサポートですが、海外市場で何が売れるかを見極めなければ、いくら資金があっても成果には繋がりません。事業計画書の説得力を決めるのも、結局は現地の一次情報の質です。
株式会社アットグローバルは、海外現地リサーチサービスを提供しており、進出先国の市場調査・競合分析・現地ビジネス慣習調査などを通じて、補助金申請の事業計画書に盛り込むべき説得力のある一次情報をご提供できます。海外展開や補助金活用についてお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


