
【取得率1%】ISO 17100とは?取得済み翻訳会社に依頼すべき理由
ご存じでしたか?ISO 17100を取得している翻訳会社は、弊社「株式会社アットグローバル」を含め、日本で1%しかありません。
この記事では、最近認知度が上がってきた「ISO 17100」とは何か、翻訳会社が取得していることがなぜ重要なのかについて、弊社のオペレーションマネージャー加治謙児が解説します。
- 「ISO 17100」の基本情報と取得条件
- 「ISO 17100」を取得している翻訳会社に依頼するメリット
- 「ISO 17100」を複数の言語ペアで取得している翻訳会社の単価比較
この記事を読んでいただくと、翻訳会社を選ぶ際の基準が明確になります。
―― 加治さん、今日はよろしくお願いいたします。最近、お客様との会話の中で、よくISO 17100について言及することがあるとお聞きしましたが、どんな経緯があるのでしょうか?
加治)そうですね。翻訳の案件に関してお客様と打ち合わせをしていると、「翻訳の実績は?」「納期は大丈夫?」「守秘義務契約(NDA)は結べる?」といった質問をされることがあります。
そんなときは、「弊社は問題ありません。ISO 17100を取得していますので」とお答えします。というのは、ISO 17100を取得している企業は、翻訳の国際基準を満たしているため、一般的な企業案件で求められるチェック項目をすでにクリアしているからです。
そのようにお伝えすると、お客様から「翻訳にもISOがあるんですね。知りませんでした」といった反応をいただくことがあります。
―― 興味深いですね。ISOといえば、製品やサービスの品質、安全性、効率性を向上させるための国際規格のことであると理解していますが、そのISOの中でも、「17100」とはどういうものでしょうか?
ISO 17100 の基本情報

ISO 17100とは?
加治)はい。ISO 17100は、翻訳業界向けの国際規格です。翻訳プロセス、品質管理、翻訳者の資格要件などが定められています。これを取得している企業は、一定の品質基準を満たしていることが国際的に証明されるため、翻訳の信頼性が高まります。
正直なところ、ISO 17100を取得するのは、労力とコストの両面でかなり大変です。アットグローバルでは2021年から取得していますが、毎年外部審査があり、当然ながら費用もかかります。
それでも、私たちが国際基準に沿った翻訳を安定して提供することで、結果としてご依頼いただく企業様が信頼を得、それがお客様の海外進出の成功につながるのなら、努力を惜しむつもりはありません。
―― ありがとうございます。アットグローバル経営陣の翻訳に対する真剣な姿勢がよく伝わってきます。では、ISO 17100の取得はどういう点で難しいのでしょうか?具体的な取得条件について教えてください。
ISO 17100 取得の要件は?
加治)はい。5つの条件に集約できると思います。
- 翻訳者・チェッカーの資格要件
- プロセスおよび文書化の整備
- 審査プロセス
- コスト負担
- 継続的な維持管理
1つずつ、解説していきますね。
1. 翻訳者・チェッカーの資格要件
最初の要件は、翻訳者やチェッカーの資格基準です。たとえば、
- 翻訳関連の学位
- 翻訳以外の学位+2年相当の翻訳経験
- 5年相当の翻訳経験
が必要です。
加えて、もし受注した翻訳案件をフリーランスなどに外部委託する場合、そうした人たちの資格も証明する必要があります。この点でアットグローバルでは50人以上の資格を持つ翻訳者・チェッカーを自社で持っていて、大規模な翻訳案件でも対応できる体制を整えています。
―― ありがとうございます。50人以上の資格あるリンギストが所属している翻訳会社は、日本に数社しかないと聞きました。
2. プロセスおよび文書化の整備
加治)その通りです。そして2つ目の要件は、翻訳プロセスと文書化の整備です。この審査は、翻訳された成果物を1つずつ確認してISO 17100の資格にかなっているかをチェックするというよりは、正確な翻訳ができる体制(ワークフロー)ができているかを審査するものです。
簡単に言うと、リンゴの実(翻訳の成果物)を一つずつチェックするのではなく、リンゴの木(翻訳会社)自体を審査し、「この木なら美味しいリンゴが実るはずだ」と認めてもらうようなものです。
その上で、どんな審査があるか、ですが、以下の画像をご覧ください。

この画像では、3つのフェイズがあります。オレンジ色の「制作前のプロセス及び活動」、黄色の「制作プロセス」、そして緑色の「制作後のプロセス」です。
それぞれのフェイズで、クライアント、翻訳者、チェッカー、PM、そして納品後のクライアントとの間で文面での合意や調整がなされているかが確認されます。これには口頭での合意は含まれないため、すべてのやりとりを文章化するという、普段からのワークフローが必要になります。
3. 審査プロセス
次の段階は審査です。上記「1.翻訳者・チェッカーの資格要件」「2.プロセスおよび文書化の整備」がしっかりと行えているかの確認がなされます。実際には、書類の提出と現場の審査の2種類があります。
文書による証明書提出
- 認証範囲の特定
審査対象となる言語ペア(例:日英・英日)、翻訳の方向性、翻訳分野、および対象となる翻訳業務従事者を特定。 - 自社プロセスの適合状況確認
翻訳プロセスがISO 17100の要求事項に適合しているかを確認し、業務手順や管理方法が規定通りであることを文書や記録で証明する。
審査員の訪問による審査
最後に、JSAの審査員が取得を望む翻訳会社のオフィスに来てチェックを行います。
- サンプリング審査
認証範囲内の案件からサンプルを選び、規定されたプロセスに従って実施されているかを評価する。具体的には以下の点を確認する。- 翻訳者・チェッカーの資格要件が満たされているか
- 翻訳、バイリンガルチェック、最終検品といった必須プロセスが実施されているか
- 文書化された手順や記録が適切に管理されているか
- 現場審査
審査員が実際に訪問し、業務環境やマニュアル、翻訳者・チェッカーの資格評価記録などを確認。
この現場審査には通常1~2日かかります。ただし、条件を満たしていない場合は、さらに時間がかかることもあります。
審査に合格するためには、毎年書類を提出し、準備をする必要があります。そのため、社内のリソースをある程度確保しなければなりません。リソースが限られている翻訳会社にとっては、対応が難しいことは容易に理解できると思います。
―― 詳しく教えてくださり、ありがとうございます。正直なところ、社内にいながらISO 17100の取得にこれほどの手間とリソースがかかっているとは知りませんでした。もっと誇りにしたいと思います。別の条件についても教えていただけますか?
4. コスト負担

加治)もちろんです。ISO 17100の認証取得にかかる実際の費用は、翻訳分野の数、従業員数、外部委託者(外注翻訳者)の数など、組織の規模や特性によって異なります。
アットグローバルとしていくらの取得費用がかかっているか、ここでは具体的に述べませんが、お客様の信頼を得るための投資と考えています。
5. 継続的な維持管理
最後は、継続的な維持管理です。ISO 17100の認証を継続するには企業として継続的な維持管理が求められます。
常に業務フローや記録を最新の状態に保ち、審査に備えることが求められます。新しい翻訳者を採用する際にも、規格に適合するスキルや経験を持つ人材を確保しなければなりません。
こうした社内のプロセスをずっと維持し続けるには、しっかりとした管理体制が必要です。当然、コストや人的リソースも必要になります。社内教育を続けていく必要もあります。
また翻訳プロジェクトごとの対応履歴、品質チェックの結果、用語集の管理状況などを文書化しておく必要もあり、業務の工数も増えます。
―― なるほどです。ここまでお聞きして、ISO 17100を維持していく大変さを痛感しました。あらためてアットグローバルという企業が、そこまでしてISO 17100を重視する理由はなんでしょうか?
加治)それはアットグローバルの企業理念「企業の国際展開を支援するイノベーターとして、世界と繋がるためのインフラとなる」というところが関係しています。1企業として単なる利益を追い求めるのではなく、海外進出を目指す企業様をサポートしたい、そのためにできることはなんでもしたいと思っているからです。
―― ありがとうございます。経営陣の熱意が伝わってきます。私たち社員も、この企業理念をいつも念頭に業務に励みたいと思います。加えてISO 17100に関して、知っておくと良い点はありますか?
JSAの翻訳区分
加治)これはISO 17100の国際規定ではないのですが、日本の審査をしているJSAさんは、翻訳の分野に応じて区分を設けています。以下のように5つに分類分けされています。
- A金融・経済・法務
- B医学・医薬
- C工業・科学技術
- D特許・知財
- Eその他(教育、観光、広報資料など)
それぞれの区分の認証をもらうには、その区分の案件を年に1件だけ翻訳をしているだけでは十分ではありません。各区分で複数の案件をこなしている必要があります。言い換えると、それぞれの区分の認証をもらっている翻訳会社は、その区分の専門性が高い、ということになります。日常的にその分野の翻訳にかかわっているからです。
アットグローバルは現在、A・B・C・Eを取得しています。Dの特許・知財に関しては、現時点で取得していませんが対応は十分可能です。
現在、パートナーとして、特許・知財を専門的に扱う株式会社ロジック・マイスター、いちご特許事務所と提携しており、専門家によるサポートも強化しています。

―― なるほどです。ISO 17100を取得していて、さらに専門性のある翻訳会社を見分ける方法になるわけですね。アットグローバルとしては、「D:特許・知財」も取得して、コンプリートしたいですね。では、これまでお話しくださったことを踏まえた上で、翻訳を依頼する企業としてISO 17100を取得している企業に案件を依頼するメリットにはどんな点がありますか?
ISO 17100 取得済み翻訳会社に依頼すべき2つの理由

加治)はい。これまでの説明で、ISO 17100認証を取得するには、企業が多くの労力とコストをかけて体制を整えていることがお分かりいただけたと思います。
こうした企業に翻訳の案件を依頼するメリットは、主に2つあります。
1.成果物を信頼できる
まず、翻訳を依頼する企業からすると、安心してISO 17100を取得している翻訳会社に依頼することができます。国際規格に基づいて認証を受けているため、品質の低い成果物が納品されることはありません。これが最初で最大のメリットです。
2.発注前のチェック作業が大幅に軽減される
2つ目として、依頼する企業としてチェックの手間を軽減できるというメリットがあります。合計で5つの確認作業が簡略化できます。
以下の表を見てもらえますか?一般的に、企業が翻訳を依頼する際にチェックする項目は以下の表の左側になります。最低限これだけは確認することでしょう。でもISO 17100を取得している翻訳会社にとっては、どれも最低条件ですので、最初から問題なくクリアしています。
一般的に必要なチェック項目 | ISO 17100取得企業ならどうなるか | ISO 17100取得企業に依頼するメリット |
翻訳者・チェッカーの専門性・実績・依頼分野に対応できるスキルがあるか・翻訳実績や顧客評価を確認する | 厳格な資格基準が担保されている・ISO 17100では翻訳者とチェッカーに対し、学位や翻訳経験年数などの要件を課しており、企業はそれを証明しなければ認証取得できない | 「この翻訳者は大丈夫か?」といった個別のスキル確認を大幅に省略・簡略化できる |
翻訳プロセス・品質管理体制・翻訳から校正・レビュー、納品までの工程・ダブルチェックの有無や品質管理手順 | プロセスの標準化・文書化が必須・ISO 17100では「翻訳と校正を別担当者が実施する」ことが基本要件。・プロジェクトごとの品質管理手順が文書化され、外部審査機関の監査を受けている | ダブルチェック体制などを改めて確認する手間が省ける |
納品物の最終品質・誤訳や表現の不自然さをチェック・用語集やスタイルガイド準拠を確認する | 品質管理手順の継続的運用・ISO 17100取得企業は定期的な外部審査や内部監査により、品質管理体制の維持を確認されている | 納品物の精度やクオリティに関するリスクが低減され、最終的な品質チェックの負担も軽減される |
納期・コスト・希望スケジュールに対応可能か・見積もりの根拠や追加費用の有無 | プロセス最適化による安定性・ISO 17100の要件に沿って作業手順が標準化・最適化されているため、手戻りやトラブルが起きにくく、納期遅延や追加コストが発生するリスクも抑えられる | 結果的に、納期面・コスト面でも安定しやすいのが特徴 |
機密情報の取り扱い・契約書や特許など機密情報のセキュリティ・守秘義務契約(NDA)の確認 | 守秘義務契約・情報管理体制が必須・ISO 17100では翻訳者・チェッカー・PMなど、プロセスに関わるすべての担当者に対する守秘義務契約の締結や、機密文書を適切に管理するための情報セキュリティ体制が審査対象となる | 機密性をめぐる二重チェックが不要になりやすい |
このように、たくさんある翻訳会社の中でも、ISO 17100を取得している会社に依頼するのが得策であることがご理解いただけたと思います。
―― 確かに、ISO 17100の威力を感じますね。最近、省庁や一流企業が、ISO 17100を意識しているという理由が良く分かりますね。
加治)もちろん、ISO 17100認証を取得しているからといって、すべてを任せきりにできるわけではありません。依頼する分野の専門知識が十分か、企業ごとの翻訳スタイルに合っているかなど、基本的なヒアリングやすり合わせは必要です。
しかし、全体的に見れば、ISO 17100取得企業であれば品質管理やセキュリティ面などでの大きなリスクが低減され、チェック作業が大幅に効率化できるといえます。
―― ここまでお話を聞いていると、ISO 17100取得の翻訳会社に依頼する一択な気がします。でも1つ気になるのが、翻訳を依頼した時の価格です。やっぱりお高くなっちゃいますか?
ISO 17100 を複数の言語で取得している企業の数と翻訳料金比較
加治)実は、それほど高くはないんですよ。もちろん、フリーランスで仕事をしている翻訳者の方のような価格設定はできませんが。
例えば、ISO 17100を英日・日英で取得している日本企業の数は、2025年2月時点で、71社あります。その中で、「英⇔日」「中⇔日」など、2か国語以上取得している企業は、弊社を含め合計7社しかありません。
そのように複数の言語でISO 17100を取得できるということは、それだけ翻訳者・チェッカーの量と質が担保されていることになります。そしてその質の良い翻訳者・チェッカーを大勢確保できるということは、普段から大企業より翻訳の仕事を安定的に供給されているからこそできることです。
例えば、株式会社アットグローバルの場合、アメリカのビッグテック(GAFAM)5社すべてから連続10年以上に渡り、翻訳の仕事を受注しています。
ISO 17100を複数の言語で取得している企業というのは、そういうレベルであるということです。その上で、7社の、例えば「英日」「日英」の翻訳単価を比較してみました。(2025年2月時点)
日英単価 | 英日単価 | |
株式会社アビリティ・インタービジネス・ソリューションズ | 公式サイトに記載なし | 公式サイトに記載なし |
株式会社川村インターナショナル | 公式サイトに記載なし | 公式サイトに記載なし |
株式会社東輪堂 | 公式サイトに記載なし | 公式サイトに記載なし |
株式会社アットグローバル | 1文字あたり 12円~18円(スタンダード翻訳の場合) | 1単語あたり 18円~24円(一般的なスタンダード翻訳の場合) |
フリット・ジャパン株式会社 | 1文字あたり 15円~(案件の内容により変動する) | 1単語あたり 13円~(案件の内容により変動する) |
ミエ トランスレーションサービス | 1文字あたり 15円~(案件の内容により変動する) | 1単語あたり 13円~(案件の内容により変動する) |
株式会社あかがね | 1文字あたり 14円~20円(案件の内容により変動する) | 1単語あたり 14円~20円(案件の内容により変動する) |
公式ページに表示していない企業もありますが、掲載している4社に関しては、価格がある程度同じであることが分かると思います。このことから、翻訳の質を担保し、安定した翻訳を続ける翻訳会社に仕事を依頼した場合の費用感が分かりますね。
それでも、弊社、アットグローバルに翻訳を依頼すべき理由が別にあります。
―― 興味深いですね。ぜひ教えてください。
翻訳を依頼するならアットグローバル!その理由は?

加治)アットグローバルは、「CQ Translation®」という商標を取得しています。これは、異文化理解を生かした翻訳のことです。
CQに関しては、こちらのインタビュー記事を参照してほしいのですが、

簡単に説明すると、文化的な背景や価値観、育った環境によって同じ言葉でも人々が受ける印象・感じ方が異なるので、それを踏まえた翻訳を行うということです。結果として、単なる言葉の変換ではなく、真に伝わるコミュニケーションを生み出すことができます。
例えば、Apple社のLPを見ているとよくわかりますよ。

以下に、CQに基づく翻訳が重要かが分かっていただけたと思います。仮に翻訳の価格が多少高いと感じられるとしても、売上やブランド力向上などのメリットを考えると、費用対効果は相当高いと思います。
このようにアットグローバルは、この異文化理解を反映させることを強みとした翻訳会社です。マーケティング資料、契約書、技術文書、多言語Webサイトなどをそれぞれの文化の違いを考慮しながら、相手の心に響く翻訳を提供します。
✅ ISO 17100認証取得
✅ 異文化理解を活かした「CQ Translation®」
ただ訳すだけではない、本当に伝わる翻訳が必要な企業の皆さんには、ぜひアットグローバルへぜひご相談くだささればと思います。よろしくお願いいたします。
―― 加治さん、本日はありがとうございました。ISO 17100に関して、そしてアットグローバルの企業理念や翻訳の根本にある考えについてよく理解できました。
ISO 17100 まとめ
- ISO 17100は、翻訳の国際基準を満たした企業だけが取得できるため、安心して依頼できる。
- ISO 17100を複数の言語ペアで取得している企業はわずか7社のみ。しかも、比較的リーズナブルな価格で提供。
- アットグローバルは、異文化理解を活かした「CQ Translation®」を導入し、心に響く翻訳を提供できる。