図面翻訳の実務ガイド|英語図面の日本語化とCAD多言語化を現場目線で解説

図面翻訳の実務ガイド|英語図面の日本語化とCAD多言語化を現場目線で解説

海外メーカーの設備を導入することになり、届いた図面がすべて英語だった。現場や協力会社に配りたいが、このままでは読めない。こうした状況で「図面 翻訳」と検索されている方に向けた記事です。

図面の翻訳は、文書の翻訳とは別の仕事です。訳文が入る場所に物理的な制限があり、文字列には前後の文脈がなく、1語の誤読が施工ミスに直結します。AI翻訳が最も苦手とする条件が、そろって揃っている領域だと言えます。

この記事では、英語図面を日本語化する実務で実際に起きる問題と、その回避方法を整理します。データ形式ごとの難易度、日英の対訳一覧、費用が決まる仕組み、見積もり前に決めておくべきことまでを扱います。海外図面の読み解きに困っている設計・施工の担当者に向いています。

  • 図面翻訳が一般の文書翻訳と異なる4つの理由
  • AI翻訳が実用になる範囲と、人手が必要になる境界線
  • 英語図面の日本語化で頻発する3つの問題と回避方法
  • 図面翻訳の費用が決まる仕組みと、見積もり前に決めておくべきこと
目次

図面翻訳が必要になる2つの場面

図面翻訳が必要になる2つの場面

図面翻訳の依頼は、海外から来た図面を日本語にする場合と、日本の図面を海外向けに多言語化する場合の2つに分かれます。同じ図面翻訳でも難所がまったく違うため、最初にどちらなのかをはっきりさせる必要があります

海外企業の英語図面を日本語にする場合

海外メーカーの設備導入、外資系企業の国内案件、海外設計事務所が引いた図面での施工。こうした場面では、英語の図面がそのまま現場に降りてきます。

読み手は現場の職長や協力会社の作業員です。英語の読解力を前提にできないため、施工に使える日本語へ確実に落とし込む必要があります。

近年この需要が伸びているのが、電気設備・機械設備・建築が同時に動く大規模案件です。海外事業者が国内に建設するデータセンターはその代表例で、後述するように図面翻訳の難易度が最も高くなる領域でもあります。

日本の図面を英語・多言語にする場合

海外工場への生産移管、海外での施工、輸出製品の技術資料添付といった場面です。日本語の図面を英語や現地語に置き換えます。

読み手は海外の技術者や現地の施工業者です。日本の設計思想や暗黙の了解が通じないため、図面に書かれていない前提まで補う判断が求められる場合があります。

方向が変われば難所も変わる

英語図面を日本語にする日本の図面を英語にする
読み手国内の現場・協力会社海外の技術者・施工業者
元データ入手できないことが多い自社にあるため扱いやすい
主な難所略語・単位・規格名の解読訳文が伸びてレイアウトが崩れる
文字量の変化短くなる傾向増える傾向
品質の判断者発注者自身が読めない場合がある現地側の指摘で判明する

英日で最も厄介なのは、発注者自身が原文を読めないため、翻訳の正しさを自分で検証できないという点です。だからこそ、訳した根拠を説明できる体制が要ります。

図面翻訳が一般の文書翻訳と決定的に違う4点

図面翻訳が一般の文書翻訳と決定的に違う4点

図面翻訳が難しいのは、専門用語が多いからではありません。訳文の置き場所が物理的に決まっていること、図と文字が切り離せないこと、誤訳の損害が大きいこと、そして文字列に文脈がないことの4点が、文書翻訳との構造的な違いです。

訳文が入る場所に物理的な制限がある

契約書やマニュアルなら、訳文が多少長くなってもページが増えるだけで済みます。図面ではそうはいきません。

表題欄の1マス、寸法線の脇、注記欄の3行。それぞれ入力できる文字数の上限が決まっています。訳せたとしても、そこに収まらなければ図面として成立しません。

図と文字が分離できない

図面の文字は、図形と位置関係で意味を持ちます。同じTYPという略語でも、どの寸法線に添えられているかで適用範囲が変わります。

文字列だけを抜き出して訳すと、この関係が失われます。訳文を戻す段階で、どの文字がどこにあったのかが分からなくなるという事故は珍しくありません。

1語の誤訳が施工ミスと手戻りに直結する

文書の誤訳は読み返せば気づきます。図面の誤訳は、そのまま材料が発注され、加工され、現場に運ばれてから発覚します。

厚みの単位を取り違える、径と半径を逆にする、材質記号を近い別の材料に置き換える。いずれも金額の大きい手戻りになります。

文字列に前後の文脈がない

図面上の文字は、単語や記号の断片です。THK 6、NTS、U.N.O. といった表記が、文章としての前後関係を持たずに並んでいます。

これが次章の結論に直結します。前後の文脈から意味を推定するのが機械翻訳の仕組みである以上、文脈が存在しない図面は、原理的に最も苦手な対象になります。

文書翻訳との違いは、専門性の高さではなく制約条件にあります。入る場所が決まっている、図と切り離せない、誤りの代償が大きい、文脈がない。この4つが図面翻訳の前提です。

AI翻訳で図面はどこまで訳せるか

AI翻訳で図面はどこまで訳せるか

AI翻訳は図面翻訳でも実用になりますが、使える範囲は限定されます。文章として書かれた注記や仕様の下訳には十分使え、略語・記号・単位・規格名では精度が落ちます。全否定でも全面採用でもなく、境界線を引いて使い分けるのが現実的です。

AI翻訳が実用になる部分

  • 注記欄や仕様欄に文章として書かれた説明文の下訳
  • 部品表や凡例など、同じ語が繰り返し出てくる箇所の一括置換
  • 内容をおおまかに把握するための、社内確認用の粗訳
  • 用語集を登録できるツールでの、固有名詞と製品名の統一

文章の体裁を持っている箇所であれば、AI翻訳の精度は実用水準に達しています。翻訳ツールの選び方については翻訳精度が高いツールの選び方と評価されている無料ツール6選でも整理しています。

AI翻訳が破綻する部分

  • 略語:TYP、NTS、THK、U.N.O. などを正式名称に展開してしまい、図面の簡潔さが壊れる
  • 記号:直径記号や半径記号、幾何公差の記号は文字として認識されないか、無関係な語に置き換わる
  • 単位:インチ・フィート・分数寸法をそのまま残すか換算するかを判断できない
  • 規格名:ASTM A36 のような材料規格を、対応する日本の規格に読み替えられない
  • 文脈のない断片:単語1語だけの文字列は、複数の訳語のどれが正しいか判断できない

いずれも図面に固有の要素です。文章部分の精度が高いことと、図面全体を任せられることは別の話になります。

AI翻訳・一般の翻訳会社・図面対応の専門翻訳の比較

AI翻訳ツール一般の翻訳会社図面対応の専門翻訳
文章の注記実用水準高精度高精度
略語・記号苦手担当者による対応可
単位・規格の換算不可事前指示が必要判断込みで対応
CADデータの体裁保持不可対応外が多い対応可(別工数)
スキャン図面不可対応外が多いデータ化から対応
費用最も安い高い
向いている用途社内確認用の粗訳文章主体の技術文書現場で使う施工図面

社内で内容を把握するだけならAI翻訳で足ります。現場に配って施工に使う図面であれば、専門翻訳が必要になります。 この線引きが費用対効果を大きく左右します。

現実的な進め方はハイブリッド

実務で採用されているのは、AIで文章部分を下訳し、技術者が略語・記号・単位を確認し、最後にレイアウトを調整する3段構えです。

全工程を人手で行うより費用を抑えられ、AI翻訳だけで済ませるより事故を防げます。どの工程まで外注するかは、図面の枚数と社内に技術者がいるかどうかで決まります。

翻訳会社に出さなくてよいケース

すべての図面を外注する必要はありません。次のような場合は、社内で処理したほうが速く、費用もかかりません。

  • 数枚だけで、社内に英語を読める技術者がいる
  • 内容の把握が目的で、現場に配布しない
  • 元データが手元にあり、文字の差し替えを自社のCAD担当ができる
  • 過去に訳した類似図面があり、用語集が社内に蓄積されている

外注が効くのは、枚数が多い場合、現場配布の責任が伴う場合、元データがなくスキャンしかない場合です。判断材料を持たないまま依頼すると、費用に見合わない結果になります。

データ形式ごとの注意点

データ形式ごとの注意点

図面翻訳の難易度と費用は、翻訳する内容よりも受け取るデータ形式で決まります。CADの元データがあるか、PDFがテキスト型か画像型か、この2点で作業量が数倍変わります。

DWG・DXFなどのCADネイティブデータ

最も扱いやすい形式です。文字が文字として存在するため、抽出して訳し、元の位置に戻せます。レイヤー構造も保持できます。

ただし、文字がレイヤーとして分離されていない場合や、図形として分解されている場合は、この利点が消えます。受領した段階で、文字が編集可能な状態かを確認する工程が必要です。

なお国内の公共工事では、国土交通省が定めるCAD製図基準と電子納品要領にレイヤー名や図面の構成が細かく規定されています。海外図面を国内案件で使う際は、この基準との突き合わせが別途発生します。

PDFはベクターかスキャン画像かで難易度が激変する

同じPDFでも、中身は2種類あります。

テキスト型PDFはCADから直接書き出されたもので、文字を選択・コピーできます。抽出して訳せるため、作業量はCADデータに近くなります。

スキャン型PDFは紙をスキャンした画像です。見た目は同じでも、中身は写真と変わりません。文字を選択できないため、OCRか手入力が必要になります。

判別方法は簡単です。PDFを開いて文字をドラッグしてみて、選択できればテキスト型、できなければ画像型です。 見積もり依頼の前に必ず確認してください。

紙・スキャン図面とOCRの限界

OCRは万能ではありません。技術図面では、次の要素で認識精度が落ちます。

  • 幾何公差などの特殊記号
  • 手書きの注記や訂正
  • 文字間隔が詰まった小さな寸法値
  • 図面特有のフォントや、かすれた線
  • 解像度が低いスキャン(一般に300dpi以上が推奨で、200dpi以下では誤認識が増える)

結果として、OCRをかけたあとに人手で照合・補正する工程が必ず入ります。この工数が、スキャン図面の費用が上がる主因です。

形式別の難易度とコストの目安

データ形式文字の抽出レイアウト再現相対的な工数
DWG・DXF可能元データを直接編集標準
テキスト型PDF可能再作図または画像上に配置やや増
スキャン型PDFOCRと人手補正再作図が必要な場合が多い大幅増
紙原本スキャンから開始再作図が前提最大

英語図面を日本語化するときに必ず出てくる3つの壁

英語図面を日本語化するときに必ず出てくる3つの壁

英語図面の日本語化で繰り返し起きる問題は、スキャンPDFで文字が拾えないこと、略語が発注元の社内独自ルールであること、訳文が長くなって枠に収まらないことの3つです。いずれも語学力では解決しません。

壁1 スキャンPDFで文字が拾えず、結局すべて手打ちになる

海外から届く図面は、PDFで送られてくる場合がほとんどです。そのうち相当数がスキャン画像で、文字を機械的に取り出せません。

前章のとおりOCRには限界があり、技術図面では記号と手書き注記で必ず取りこぼします。結果として、寸法と注記を1つずつ目視で拾い、手で入力する作業になります。

回避策は、依頼の前に元データの有無を確認することに尽きます。海外の設計元にDWGまたはテキスト型PDFの提供を求めるだけで、作業量と費用が大きく変わります。

時間の制約で入手できない場合は、データ化と翻訳をまとめて引き受けられる体制を選ぶほうが、工程が分断されずに済みます。

壁2 略語が発注元の社内独自ルールで、確認しないと訳せない

TYP、NTS、THK、DIA のような業界共通の略語は、辞書化すれば対応できます。問題はそこではありません。

実務で止まるのは、発注元やプロジェクト固有の略語です。設備の呼称、工区の記号、社内の部材コード。これらは一般の辞書にも技術用語集にも載っていません。

さらに厄介なのは、図面上の略語には前後の文脈がないため、推測が効かないという点です。文章なら周囲から意味を絞り込めますが、単独で置かれた3文字の略語には手がかりがありません。

対処は2つです。着手時に略語の定義リストを作り、発注元と共有すること。そして、判断がつかない箇所を設計担当に直接確認できる導線を用意しておくことです。この確認を省くと、もっともらしい誤訳が図面に残ります。

壁3 訳文が原文より長くなり、図面枠や欄に収まらない

英日でも日英でも起こります。特に日本語から英語にする場合、文字量が大きく増えて表題欄や注記欄からあふれます。

英語から日本語にする場合も、略語を正式な日本語名称に展開すると文字数が伸びます。HDG という3文字を溶融亜鉛めっきとすると、7文字に膨らみます。

ここで必要になるのが、意味を保ったまま短い表記に落とす判断と、文字サイズ・改行位置・配置の調整です。翻訳と図面編集が分かれていると、この工程で必ず手戻りが出ます。レイアウト調整の作業範囲についてはDTP・対応可能ドキュメントも参考になります。

そのほかに判断が必要になる論点

  • 全大文字表記:図面の文字は慣例的にすべて大文字で書かれます。固有名詞と一般語の区別がつかず、略語なのか単語なのかも判別しにくくなります
  • インチ・フィートと分数寸法:ミリに換算するか原文のまま残すかは、施工側がどちらで作業するかで決めます。両方を併記する方法もあります
  • 規格材料名:ASTM、BS、EN の材料規格には、日本語の定訳がないものがあります。対応するJIS材料に読み替えるか、規格名をそのまま残すかの判断が要ります。規格の内容は日本産業標準調査会のJIS検索で確認できます
  • 現場が読める用語への落とし込み:技術的に正しい訳語と、現場や協力会社が日常的に使っている呼称が一致しない場合があります。図面は読まれてこそ意味を持つため、通用する呼び方を優先する判断が必要になります

図面の英語表記・略語 日英対訳一覧

図面の英語表記・略語 日英対訳一覧

英語図面を読む際に頻出する表記を、用途別に整理しました。手元の図面と照らし合わせながらご利用ください。

表題欄・図面枠の英語表記

英語表記日本語
Drawing / DWG図面
Title Block表題欄
Drawing No.図面番号
Scale尺度
Third Angle Projection第三角法
Revision / REV改訂
Drawn by / DWN作図者
Checked by / CHKD検図者
Approved by / APPD承認者
Bill of Materials / BOM部品表
Notes注記
Legend凡例
Unit単位

寸法・公差まわりの英語表記

英語表記日本語
Dimension / DIM寸法
Diameter / DIA直径
Radius / R半径
Thickness / THK厚さ
Tolerance / TOL公差
Datum基準
Chamfer面取り
Center Line / CL中心線
Reference / REF参考寸法
Elevation / EL標高・レベル
Section / SECT断面
Detail詳細図

図面で頻出する略語

略語正式表記日本語
TYPTypical代表・同様に適用
NTSNot To Scale尺度によらない
U.N.O. / U.O.N.Unless Noted Otherwise / Unless Otherwise Noted特記なき限り
APPROXApproximately
ASSYAssembly組立
GAGeneral Arrangement一般配置図
NICNot In Contract契約範囲外
OD / IDOutside / Inside Diameter外径・内径
REQDRequired必要
SIMSimilar同様
SPECSpecification仕様書
W/ ・ W/OWith / Without付き・なし

材料・仕上げの英語表記

英語表記日本語
Carbon Steel炭素鋼
Stainless Steelステンレス鋼
Cast Iron鋳鉄
Aluminumアルミニウム
Concreteコンクリート
Reinforcing Bar鉄筋
Formwork型枠
Galvanized / GALV亜鉛めっき
Hot Dip Galvanized / HDG溶融亜鉛めっき
Powder Coating粉体塗装
Heat Treatment熱処理
Welding溶接

電気図面・単線結線図まわりの英語表記

電気設備の図面は、建築や機械とは用語体系が異なります。単線結線図を英語で読む機会が多い方は、この表が中心になります。

英語表記日本語
Single Line Diagram / SLD(One Line Diagramとも)単線結線図
One Line Diagram単線結線図
Riser Diagram系統図
Substation受変電設備
High Voltage / HV高圧
Low Voltage / LV低圧
Transformer / TR変圧器
Circuit Breaker / CB遮断器
Disconnecting Switch / DS断路器
Switchboard配電盤
Distribution Board分電盤
UPS無停電電源装置
Emergency Generator非常用発電機
Earthing / Grounding接地
Conduit電線管
Cable Trayケーブルラック
Rated Capacity定格容量
Power Factor / PF力率

建設・建築ならではの論点

建設・建築ならではの論点

建設分野の図面翻訳が機械分野と違うのは、1つの案件で複数の用語体系が同時に走る点です。意匠・構造・設備で使う語彙が異なり、さらに法規と規格の対応関係が国ごとに揃いません。

意匠・構造・設備で用語体系が違う

同じ建物の図面でも、意匠図・構造図・設備図では使われる語が入れ替わります。意匠は仕上げと寸法、構造は部材と配筋、設備は系統と容量が中心です。

1人の翻訳者が3分野すべてに精通しているとは限りません。分野ごとに担当を分けるか、分野横断の用語集を先に整備するかの判断が要ります。

施工図・製作図は設計図より訳が難しい

設計図は意図を示す図面なので、記載は比較的整理されています。施工図と製作図は、実際に作るための情報が細かく書き込まれ、社内独自の表記も増えます。

翻訳の難易度は設計図より高くなります。前章の壁2で挙げた社内独自の略語は、施工図と製作図で特に多く現れます。

建築基準法と海外規格の用語は1対1で対応しない

耐火性能、耐震等級、防火区画といった概念は、日本の法体系に固有の区分を持ちます。英語圏の規格にも似た概念はありますが、区分の切り方が違います。

こうした語は、直訳すると意味がずれます。原語を残したうえで注記で説明を添える方法が安全です。海外案件での対応については、国土交通省の建設・不動産企業の国際展開支援施策で公開されている資料も参考になります。

データセンター案件でいま起きていること

データセンター案件でいま起きていること

英語図面の日本語化需要がいま最も濃く出ているのは、データセンターの建設案件です。海外事業者が国内に建てるケースが増え、設計元が海外のまま施工だけが国内という構図が生まれています。

データセンターをめぐる国内の動向は、国立国会図書館「調査と情報―ISSUE BRIEF―」No.1343「データセンターをめぐる動向」でも取り上げられており、東京圏への一極集中と災害対策の観点からの地方分散が政策課題として整理されています。建設地が地方に広がるほど、地元の施工業者が英語図面を読む場面が増えます。

英語図面がそのまま現場に降りてくる

海外事業者の案件では、設計と仕様策定が海外で行われ、図面が英語のまま国内の施工側に渡されます。日本語版が用意されないまま着工することも珍しくありません。

読み手は地元の電気工事業者や設備業者です。英語の技術図面を日常的に扱う環境にはないため、翻訳が工程上の必須作業になります。

データセンター案件で多い図面種別

図面種別内容翻訳上の難所
単線結線図受電設備からラックまでの電力の流れ記号と略語が中心で文脈が最も薄い
系統図受電から分電盤、末端負荷までの配電ルート冗長構成の表記
平面図・フロアレイアウト図ラック、機器、配電ユニット、空調の配置改訂が頻繁で差分照合が発生する
機器配置図サーバ、ネットワーク機器、冷却設備の配置と接続機器名を訳さず残す判断が要る
配管系統図冷却塔からチラー、空調機までの冷却水系統機械設備の用語体系に切り替わる
受電設備図高圧受電設備の単線結線図と姿図国内規格と海外規格の用語が混在する

電気・機械・建築の3つの用語体系をまたぐ

データセンターの図面翻訳が難しいのは、1つの案件で3分野が同時に走るためです。受変電とUPSは電気、冷却水系統は機械、フロア構成と耐火区画は建築の語彙になります。

分野をまたぐと、同じ英単語が別の訳語になる場面が出てきます。用語集を分野別に分けて管理しないと、図面ごとに訳語が揺れます。

工期が短く、翻訳が工程のボトルネックになりやすい

データセンター建設は、稼働開始日から逆算した工程が組まれます。図面の改訂も頻繁で、翻訳の待ち時間がそのまま工程の遅れになります。

このため、初回の全訳よりも、改訂差分だけを短時間で回せる体制のほうが実務上の価値が高くなります。用語集と翻訳メモリを最初に整えておくかどうかで、2回目以降の納期が変わります。

改訂・設計変更にどう対応するか

改訂・設計変更にどう対応するか

図面翻訳では、初回の翻訳より改訂対応のほうが総量が多くなります。最初の依頼時点で、改訂をどう扱うかを決めておくことが費用と納期を左右します。

図面は必ず改訂される

設計変更、現場からの指摘、仕様の追加。図面は着工後も更新され続けます。改訂版が届くたびに全面的に訳し直すと、費用も時間も膨らみます。

有効なのは、改訂前後を機械的に比較して差分だけを抽出する運用です。ただしスキャン図面ではこの比較ができないため、ここでも元データの有無が効いてきます。

誤記訂正の扱いを決めておく

原図の誤記をそのまま訳すか、訂正して訳すかは、事前に方針を決めておくべき論点です。翻訳側の判断で直すと、原図との対応が取れなくなります。

一般的には、原文どおり訳したうえで、気づいた点を申し送りとして別途報告する形が安全です。

用語集と翻訳メモリを資産にする

初回に作った略語の定義リストと用語集は、2回目以降の案件で効きます。同じ発注元の図面であれば、独自略語の大半が再利用できます。

継続的に発注する見込みがあるなら、初回の見積もり時に用語集の作成と納品を明示的に含めておくことをおすすめします。品質を安定させる仕組みとしては、翻訳の国際規格であるISO 17100の考え方も参考になります。

図面翻訳の費用と納期の考え方

図面翻訳の費用と納期の考え方

図面翻訳の費用は、文字数やワード数だけでは決まりません。翻訳料金に加えて、データ化・CAD作業・レイアウト調整という3つの工数が積み上がる構造になっています。この構造を理解しておくと、見積もりの妥当性を判断できます。

課金単位は文字数かワード数か

日本語を起点とする場合は文字数、英語を起点とする場合はワード数で計算するのが一般的です。案件によって、どちらを基準にするかを調整します。

ここで注意が必要なのは、図面は1枚あたりの文字量が少ないという点です。文字単価だけで計算すると極端に安い金額が出ますが、実際には後述の工数が総額の大半を占めます。翻訳料金を左右する要因については日英翻訳の相場を決める6つの要因で整理しています。

CAD作業が入ると費用構造が変わる

CADデータを直接編集する作業は、翻訳者ではなくCADを扱える担当者が行います。この工程が入る場合、翻訳料金とは別に作業費が発生します。

納品形式をPDFにするか、CADデータのまま返すかで金額が変わるのはこのためです。見積もり依頼時に納品形式を伝えると、精度の高い金額が出ます。

レイアウト調整の工数は別建てになる

訳文を図面の枠内に収める調整は、翻訳とは別の作業です。文字サイズの変更、改行位置の調整、配置の修正が含まれます。

壁3で述べたレイアウト崩れへの対応が、ここに相当します。図面の枚数と、文字の詰まり具合で工数が変わります。

スキャン図面はデータ化の工数が乗る

スキャン型PDFや紙原本の場合、OCRと人手補正、場合によっては再作図の工数が加算されます。同じ枚数でも、CADデータがある場合と比べて総額が大きく変わります。

費用が膨らむ条件と抑える条件

費用が膨らむのは次の場合です。

  • 元データがなくスキャンPDFまたは紙しかない
  • 納品形式がCADデータで、レイヤー構造の保持を求められる
  • 用語集がなく、独自略語の確認に時間がかかる
  • 改訂のたびに全面翻訳をやり直している
  • 短納期で、複数名を同時に投入する必要がある

費用を抑えられるのは次の場合です。

  • CADの元データ、またはテキスト型PDFを渡せる
  • 納品形式がPDFで足りる
  • 略語の定義リストを発注側で用意できる
  • 改訂は差分だけを依頼する運用にしている
  • 全訳ではなく、必要な図面・必要な範囲に絞って依頼する

総額を左右するのは翻訳の単価ではなく、元データの有無と納品形式です。 見積もりを比較する際は、単価ではなくこの2点の前提が揃っているかを確認してください。

見積もり依頼の前に決めておくべきこと

見積もり依頼の前に決めておくべきこと

図面翻訳の見積もりは、条件が揃っていないと概算しか出せません。依頼前に次の項目を整理しておくと、金額と納期の精度が上がり、着手後の手戻りも減ります。

初めて図面翻訳を外注する場合に決めること

初めて依頼する場合は、まず次の3点だけを確認すれば足ります。

  1. 手元にあるのはCADデータか、テキスト型PDFか、スキャン型PDFか
  2. 納品形式はPDFでよいか、CADデータで戻す必要があるか
  3. 現場に配布して施工に使うのか、社内で内容を把握するだけなのか

3点目が特に重要です。社内確認が目的なら、AI翻訳と部分的な人手確認で足りる場合があり、費用が1桁変わります。

継続的に発注している場合に整備すること

すでに図面翻訳を継続的に依頼している場合、単価の交渉より運用の整備のほうが効果があります。

  • 略語と部材呼称の定義リストを社内で一本化する
  • 用語集と翻訳メモリを納品物に含め、自社に蓄積する
  • 改訂対応を差分ベースの運用に切り替える
  • 分野ごとに用語集を分けて管理する

これらは初回に手間がかかりますが、2回目以降の納期と費用に効き続けます。

見積もり依頼前のチェックリスト

  • 原本データの有無(DWG・DXFがあるか)
  • PDFはテキスト型かスキャン型か(文字を選択できるか)
  • 社内独自の略語リストの有無
  • 既存の用語集・過去の翻訳実績の有無
  • 納品形式(PDF・CADデータ・レイヤー構造の保持要否)
  • 図面の枚数と、翻訳が必要な範囲
  • 改訂対応をどこまで含めるか
  • 機密保持契約の要否

図面翻訳のよくある質問

図面翻訳のよくある質問
料金はどのように決まりますか

翻訳料金に、データ化・CAD作業・レイアウト調整の工数を加えた合計で決まります。日本語起点なら文字数、英語起点ならワード数が翻訳料金の基準です。図面は1枚あたりの文字量が少ないため、翻訳単価より工数側が総額を左右します。元データがCADで納品形式がPDFなら費用は抑えられ、スキャン図面からCADデータで納品する場合は大きく上がります。

紙の図面しかないのですが翻訳できますか

対応できます。スキャンしてOCRをかけ、認識できない箇所を人手で補正したうえで翻訳します。ただし、記号や手書き注記はOCRで取りこぼすため、照合の工数が加わります。同じ枚数でもCADデータがある場合より費用と納期が増える点はご承知おきください。可能であれば設計元に元データを確認することをおすすめします。

AI翻訳と専門の翻訳会社は何が違いますか

文章として書かれた注記の翻訳精度は、どちらも実用水準に達しています。差が出るのは略語・記号・単位・規格名と、レイアウトの再現です。AI翻訳は略語を正式名称に展開してしまい、インチとミリの換算判断もできません。社内で内容を把握するだけならAI翻訳、現場で施工に使う図面なら専門翻訳、という使い分けが現実的です。

社内独自の略語がありますが対応できますか

対応できますが、発注側からの情報提供が必要です。社内固有の略語や部材コードは辞書にも用語集にも存在せず、図面上には前後の文脈がないため推測もできません。着手時に定義リストを共有していただくか、判断のつかない箇所を設計担当に確認できる体制を用意する形になります。この確認を省くと誤訳が残ります。

CADデータのまま納品してもらえますか

可能です。ただしCADデータを直接編集する作業は翻訳とは別工程となり、CADを扱える担当者が対応するため追加費用が発生します。納品形式をPDFにするかCADデータにするかで金額が変わりますので、見積もり依頼の段階でご指定ください。レイヤー構造の保持が必要かどうかも、あわせてお伝えいただけると精度が上がります。

一部の図面だけ翻訳を依頼できますか

できます。むしろ費用を抑えるうえで有効な方法です。全図面を一律に訳すのではなく、現場に配布する図面と社内確認にとどめる図面を分け、前者だけを専門翻訳に出す運用が実務的です。図面内の範囲を限定することも可能で、注記欄と表題欄だけといった依頼にも対応できます。

改訂版が出るたびに全部訳し直す必要がありますか

必要ありません。改訂前後を比較して差分だけを翻訳する運用が可能です。用語集と翻訳メモリを蓄積しておけば、2回目以降は納期も費用も下がります。ただしスキャン図面では機械的な差分比較ができないため、この運用を前提にするならCADデータかテキスト型PDFの入手が条件になります。

図面翻訳と英語図面の日本語化を成功させるためのまとめ

図面翻訳と英語図面の日本語化を成功させるためのまとめ
  • 図面翻訳が難しいのは専門性ではなく、訳文の置き場所が決まっている、図と文字が分離できない、誤訳の代償が大きい、文脈がないという4つの制約による
  • 英語図面の日本語化では、発注者自身が原文を読めないため、訳した根拠を説明できる体制が要る
  • AI翻訳は文章として書かれた注記には実用水準だが、略語・記号・単位・規格名では判断できない
  • 社内で内容を把握するだけならAI翻訳、現場に配って施工に使うなら専門翻訳という線引きが費用対効果を決める
  • 実務で繰り返し起きるのは、スキャンPDFで文字が拾えない、独自略語が確認しないと訳せない、訳文が伸びて枠に収まらないの3つ
  • 総額を左右するのは翻訳単価ではなく、元データの有無と納品形式の2点
  • データセンター案件では電気・機械・建築の3つの用語体系が同時に走るため、分野別の用語集管理が要る
  • 継続案件では単価交渉より、略語リストの一本化と差分翻訳への切り替えのほうが効果が大きい

英語図面の翻訳や、CAD図面の多言語化についてお困りの際は、アットグローバルにご相談ください。

目次